御書5
建治三年九月九日 五六歳
鵞目一貫文・油一升・衣一つ・筆十管給び候。 今に始めぬ御志、申し尽くしがたく候へば法華経・釈迦仏に任せ奉り候。先立ってより申し候、但在家の御身は余念もなく日夜朝夕南無妙法蓮華経と唱へ候ひて、最後臨終の時を見させ給へ。妙覚の山に走り登り四方を御覧ぜよ。法界は寂光土にして瑠璃を以て地とし、金縄を以て八つの道をさかひ、天より四種の花ふり、虚空に音楽聞こえ、諸仏菩薩は皆常楽我浄の風にそよめき給へば、我等も必ず其の数に列ならん。法華経はかゝるいみじき御経にてをはしまいらせ候。委細はいそぎ候間申さず候。 恐々謹言 九月九日
日 蓮 花押
松野殿御返事 追って申し候。目連樹十両計り給び候べく候。