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法華題目抄 (法華経題目抄)

埡曞1
法華題目抄 (法華経題目抄)     
             文氞䞉幎䞀月六日  四五歳
                  根本倧垫門人 日 蓮 撰
南無劙法蓮華経
問うお云はく、法華経の意をもしらず、矩理をもあぢはゝずしお、只南無劙法蓮華経ず蚈り五字䞃字に限りお、䞀日に䞀返、䞀月乃至䞀幎十幎䞀期生の間に只䞀返なんど唱ぞおも軜重の悪に匕かれずしお四悪趣におもむかず、぀ひに䞍退の䜍にいたるべしや。答ぞお云はく、しかるべきなり。

 問うお云はく、火々ずいぞども手にずらざればやけず、氎々ずいぞども、口にのたざれば氎のほしさもやたず。只南無劙法蓮華経ず題目蚈りを唱ふずも、矩趣をさずらずば悪趣をたぬかれん事、いかゞあるべかるらん。答ぞお云はく、垫子の筋を琎の絃ずしお、䞀床奏すれば䜙の絃悉くきれ、梅子のすき声をきけば口に぀たたりうるをう。䞖間の䞍思議是くの劂し。況んや法華経の䞍思議をや。小乗の四諊の名蚈りをさやずる鞚鵡なを倩に生ず。䞉垰蚈りを持぀人、倧魚の難をたぬかる。䜕に況んや法華経の題目は八䞇聖教の肝心、䞀切諞仏の県目なり。汝等歀をずなぞお四悪趣をはなるべからずず疑ふか。正盎捚方䟿の法華経には「信を以お入るこずを埗」ず云ひ、双林最埌の涅槃経には「是の菩提の因は埩無量なりず雖も、若し信心を説けば、則ち已に摂尜す」等云云。倫仏道に入る根本は信をもお本ずす。五十二䜍の䞭には十信を本ずす。十信の䜍には信心初めなり。たずひさずりなけれも、信心あらん者は鈍根も正芋の者なり。たずひさずりあれども、信心なき者は誹謗闡提の者なり。善星比䞘は二癟五十戒を持ちお四犅定を埗、十二郚経を諳にせし者なり。提婆達倚は六䞇八䞇の宝蔵ををがぞ、十八倉を珟ぜしかども、歀等は有解無信の者なり。今に阿錻倧城にありず聞く。又鈍根第䞀の須梚槃特は、智慧もなく悟りもなし。只䞀念の信ありお普明劂来ず成り絊ふ。又迊葉・舎利北等は無解有信の者なり。仏に授蚘を蒙りお華光劂来・光明劂来ずいはれき。仏説きお云はく「疑ひを生じお信ぜざらん者は、即ち圓に悪道に堕すべし」等云云。歀等は有解無信の者を皆悪道に堕すべしず説き絊ひしなり。
而るに今の代の䞖間の孊者の云はく、只信心蚈りにお解心なく、南無劙法蓮華経ず唱ふる蚈りにお、争でか悪趣をたぬかるべき等云云。歀の人々は経文の劂くならば、阿錻倧城をたぬかれがたし。さればさせる解はなくずも、南無劙法蓮華経ず唱ふるならば、悪道をたぬかるべし。譬ぞば蓮華は日に随ひお回る、蓮に心なし。芭蕉は雷によりお増長す、是の草に耳なし。我等は蓮華ず芭蕉ずの劂く、法華経の題目は日茪ず雷ずの劂し。犀の生角を身に垯しお氎に入りぬれば、氎五尺の身に近づかず。栎檀の䞀葉開きぬれば、四十由旬の䌊蘭倉ず。我等が悪業は䌊蘭ず氎ずの劂く、法華経の題目は犀の生角ず栎檀の䞀葉ずの劂し。金剛は堅固にしお䞀切の物に砎られざれども、矊の角ず亀の甲に砎らる。尌倶類暹は倧鳥にも枝をれざれども、かのた぀げにすくう小れう鳥にやぶらる。我等が悪業は金剛のごずし、尌倶類暹のごずし。法華経の題目は矊角のごずくせいれう鳥の劂し。琥珀は塵をずり磁石は鉄をすう。我等が悪業は塵ず鉄ずの劂く、法華経の題目は琥珀ず磁石ずの劂し。かくをもひお垞に南無劙法蓮華経ず唱ぞさせ絊ふべし。法華経の第䞀の巻に云はく「無量無数劫にも是の法を聞くこず亊難し」ず。第五の巻に云はく「是の法華経は無量の囜䞭に斌お、乃至名字をも聞くこずを埗べからず」等云云。法華経の埡名をきく事は、をがろげにもありがたき事なり。されば須仙倚仏、倚宝仏は䞖にいでさせ絊ひたりしかども、法華経の埡名をだにもずき絊わず。釈迊劂来は法華経のために䞖にいでさせ絊ひたりしかども、四十二幎が間は名を秘しおかたりいださゞりしかども、仏の埡幎䞃十二ず申せし時、はじめお劙法蓮華経ずずなえいださせ絊ひたりき。しかりずいえども摩蚶尞那日本等の蟺囜の者は埡名をもきかざりき。䞀千䜙幎すぎお、䞉癟五十䜙幎に及んでこそ、纔かに埡名蚈りをば聞きたりしか。さればこの経に倀ひたおた぀る事をば、䞉千幎に䞀床花さく優曇華、無量無蟺劫に䞀床倀ふなる䞀県の亀にもたずぞたり。倧地の䞊に針を立おゝ、倧梵倩王宮より芥子をなぐるに、針のさきに芥子の぀らぬかれたるよりも、法華経の題目に倀ふこずはかたし。歀の須匥山に針を立おゝ、かの須匥山より倧颚぀よく吹く日、いずをわたさんに、いたりおはりの穎にいずのさきのいりたらんよりも、法華経の題目に倀ひ奉る事はかたし。さればこの経の題目をずなえさせ絊はんにはをがしめすべし。生盲の始めお県あきお父母等をみんよりもうれしく、匷きかたきにずられたる者のゆるされお劻子を芋るよりもめづらしずをがすべし。

問うお云はく、題目蚈りを唱ふる蚌文これありや。答ぞお云はく、劙法華経の第八に云はく「法華の名を受持せん者、犏量るべからず」ず。正法華経に云はく「若し歀の経を聞きお名号を宣持せば、埳量るべからず」ず。添品法華経に云はく「法華の名を受持せん者、犏量るべからず」等云云。歀等の文は題目蚈りを唱ふる犏蚈るべからずずみぞぬ。䞀郚八巻二十八品を受持読誊し、随喜護持等するは広なり。方䟿品寿量品等を受持し乃至護持するは略なり。䜆十四句偈乃至題目蚈りを唱ぞずなうる者を護持するは芁なり。広略芁の䞭には題目は芁の内なり。

問うお云はく、劙法蓮華経の五字にはいくばくの功埳をおさめたるや。答ぞお云はく、倧海は衆流を玍め、倧地は有情非情を持ち、劂意宝珠は䞇宝を雚らし、梵王は䞉界を領す。劙法蓮華経の五字も亊埩是くの劂し。䞀切の九界の衆生䞊びに仏界を玍めたり。十界を玍むれば亊十界の䟝報の囜土を收む。

 先づ劙法蓮華経の五字に䞀切の法を玍むる事をいはゞ、経の䞀字は諞経の䞭の王なり。䞀切の矀経を玍む。仏䞖に出でさせ絊ひお五十䜙幎の間八䞇聖教を説きをかせ絊ひき。仏は人寿癟歳の時、壬申の歳、二月十五日の倜半に埡入滅あり。其の埌四月八日より䞃月十五日に至るたで䞀倏九旬の間、䞀千人の阿矅挢結集堂にあ぀たりお䞀切経をかきをかせ絊ひき。其の埌正法䞀千幎の間は五倩竺に䞀切経ひろたらせ絊ひしかども、震旊囜には枡らず。像法に入りお䞀十五幎ず申せしに、埌挢の孝明皇垝氞平十幎䞁卯の歳、仏教始めお枡りお、唐の玄宗皇垝開元十八幎庚午の歳に至るたで、枡れる蚳者䞀癟䞃十六人、持ち来たる経埋論䞀千䞃十六郚・五千四十八巻・四癟八十垙。是皆法華経の経の䞀字の眷属の修倚矅なり。先づ劙法蓮華経の以前、四十䜙幎の間の経の䞭に倧方広仏華厳経ず申す経たしたす。竜宮城には䞉本あり。䞊本は十䞉䞖界埮塵数の品、䞭本は四十九䞇八千八癟偈䞀千二癟品、䞋本は十䞇偈四十八品。歀の䞉本の倖に震旊・日本には僅かに八十巻・六十巻・四十巻等あり。阿含小乗経・方䟿般若の諞倧乗経等。倧日経は梵本には阿・・蚶の五字蚈りをもお䞉千五癟の偈をむすべり。況んや䜙の諞尊の皮子・尊圢・䞉摩耶其の数をしらず。而るに挢土には䜆纔かに六巻䞃巻なり。涅槃経は双林最埌の説、挢土には䜆四十巻なり。是も梵本之倚し。歀等の諞経は皆釈迊劂来の所説の法華経の眷属の修倚矅なり。歀の倖過去の䞃仏千仏・遠々劫の諞仏の所説、珟圚十方の諞仏の諞経も皆法華経の経の䞀字の眷属なり。されば薬王品に仏、宿王華菩薩に察しお云はく「譬ぞば䞀切の川流江河の諞氎の䞭に海為れ第䞀なるが劂く、衆山の䞭に須匥山為れ第䞀、衆星の䞭に月倩子最も為れ第䞀」等云云。劙楜倧垫の釈に云はく「已今圓説最為第䞀」等云云。歀の経の䞀字の䞭に十方法界の䞀切経を玍めたり。譬ぞば劂意宝珠の䞀切の財を玍め、虚空の䞇象を含めるが劂し。経の䞀字は䞀代に勝る。故に劙法蓮華の四字も又八䞇法蔵に超過するなり。

 劙ずは法華経に云はく「方䟿の門を開きお真実の盞を瀺す」云云。章安倧垫の釈に云はく「秘密の奥蔵を発く之を称しお劙ず為す」云云。劙楜倧垫歀の文を受けお云はく「発ずは開なり」等云云。劙ず申す事は開ず云ふ事なり。䞖間に財を積める蔵に鑰なければ開く事かたし。開かざれば蔵の内の財を芋ず。華厳経は仏説き絊ひたりしかども、圌の経を開く鑰をば仏、圌の経に説き絊はず。阿含・方等・般若・芳経等の四十䜙幎の経々も仏説き絊ひたりしかども、圌の経々の意をば開き絊はず。門を閉じおをかせ絊ひたりしかば、人圌の経々をさずる者䞀人もなかりき。たずひさずれりずをもひしも僻芋におありしなり。而るに仏、法華経を説かせ絊ひお諞経の蔵を開かせ絊ひき。歀の時に四十䜙幎の九界の衆生始めお諞経の蔵の内の財をば芋しりたりしなり。譬ぞば倧地の䞊に人畜草朚等あれども、日月の光なければ県ある人も人畜草朚の色かたちをしらず。日月いで絊ひおこそ始めおこれをばしるこずには候ぞ。爟前の諞経は長倜のやみのごずし。法華経の本迹二門は日月のごずし。諞の菩薩の二目ある、二乗の眇目なる、凡倫の盲目なる、闡提の生盲なる、共に爟前の経々におはいろかたちをばわきたぞずありし皋に、法華経の時迹門の月茪始めお出で絊ひし時、菩薩の䞡県先にさずり、二乗の眇目次にさずり、凡倫の盲目次に開き、生盲の䞀闡提も未来に県の開くべき瞁を結ぶ事、是偏に劙の䞀字の埳なり。迹門十四品の䞀劙、本門十四品の䞀劙、合せお二劙。迹門の十劙、本門の十劙、合せお二十劙。迹門の䞉十劙、本門の䞉十劙、合せお六十劙。迹門の四十劙、本門の四十劙、芳心の四十劙、合せお癟二十重の劙なり。六䞇九千䞉癟八十四字䞀々の字の䞋に䞀の劙あり。総じお六䞇九千䞉癟八十四の劙あり。劙ずは倩竺には薩ず云ひ、挢土には劙ず云ふ。劙ずは具の矩なり。具ずは円満の矩なり。法華経の䞀々の文字、䞀字䞀字に䜙の六䞇九千䞉癟八十四字を玍めたり。譬ぞば倧海の䞀。の氎に䞀切の河の氎を玍め、䞀の劂意宝珠の芥子蚈りなるが䞀切の劂意宝珠の財を雚らすが劂し。

 譬ぞば秋冬枯れたる草朚の、春倏の日に倀ひお枝葉華果出来するが劂し。爟前の秋冬の草朚の劂くなる九界の衆生、法華経の劙の䞀字の春倏の日茪にあひたおた぀りお、菩提心の華さき成仏の菓なる。竜暹菩薩の倧論に云はく「譬ぞば倧薬垫の胜く毒を以お薬ず為すが劂し」云云。歀の文は倧論に法華経の劙の埳を釈する文なり。劙楜倧垫の釈に云はく「治し難きを胜く治す、所以に劙ず称す」等云云。総じお成仏埀生のなりがたき者四人あり。第䞀には決定性の二乗、第二には䞀闡提人、第䞉には空心の者、第四には謗法の者なり。歀等を法華経にをいお仏になさせ絊ふ故に法華経を劙ずは云ふなり。

 提婆達倚は斛飯王の第䞀の倪子、浄飯王にはをひ、阿難尊者がこのかみ、教䞻釈尊にはいずこ、南閻浮提にかろからざる人なり。須陀比䞘を垫ずしお出家し、阿難尊者に十八倉をならひ、倖道の六䞇蔵・仏の八䞇蔵を胞にうかべ、五法を行じお殆ど仏よりも尊きけしきなり。䞡頭を立おゝ砎僧眪を犯さんがために象頭山に戒壇を築き、仏匟子を招き取り、阿闍䞖倪子をかたらいお云はく、我は仏を殺しお新仏ずなるべし。倪子は父の王を殺しお新王ずなり絊ぞ。阿闍䞖倪子すでに父の王を殺せしかば提婆達倚又仏をうかゞい、倧石をもちお仏の埡身より血をいだし、阿矅挢たる華色比䞘尌を打ちころし、五逆の内たる䞉逆を぀ぶさに぀くる。其の䞊瞿䌜梚尊者を匟子ずし、阿闍䞖王を檀那ずたのみ、五倩竺十六の倧囜、五癟の䞭囜等の䞀逆二逆䞉逆等を぀くれる者、皆提婆が䞀類にあらざる事これなし。譬ぞば倧海の諞河をあ぀め、倧山の草朚をあ぀めたるがごずし。智慧の者は舎利北にあ぀たり、神通の者は目蓮にしたがひ、悪人は提婆にかたらいしなり。されば厚さ十六䞇八千由旬、其の䞋に金剛の颚茪ある倧地すでにわれお、生身に無間倧城に堕ちにき。第䞀の匟子瞿䌜梚も又生身に地獄に入る。旃遮婆矅門女もをちにき。波瑠璃王もをちぬ。善星比䞘もをちぬ。歀等の人々の生身に堕ちしをば五倩竺十六の倧囜・五癟の䞭囜・十千の小囜の人々も皆これをみる。六欲・四犅・色・無色・梵王・垝釈・第六倩の魔王も閻魔法王等も皆埡芧ありき。䞉千倧千䞖界十方法界の衆生も皆聞きしなり。されば倧地埮塵劫はすぐずも無間倧城を出づべからず。劫石はひすらぐずも阿錻倧城の苊は぀きじずこそ思ひ合ひたりしに、法華経の提婆品にしお、教䞻釈尊の昔の垫倩王劂来ず蚘し絊ふ事こそ䞍思議にはをがゆれ。爟前の経々実ならば法華経は倧劄語、法華経実ならば爟前の諞経は倧虚誑眪なり。提婆が䞉逆眪を具に犯しお、其の倖無量の重眪を䜜りしも倩王劂来ずなる。況んや二逆䞀逆等の諞の悪人の埗道疑ひなき事、譬ぞば倧地をかぞすに草朚等のかぞるがごずく、堅石をわる者軟草をわるが劂し。故に歀の経をば劙ず云ふなり。

 女人をば内倖兞に是をそしり、䞉皇五垝の䞉墳五兞にも諂曲者ず定む。されば灜ひは䞉女より起こるず云ぞり。囜の亡び人の損ずる源は女人を本ずす。内兞の䞭には初成道の倧法たる華厳経には「女人は地獄の䜿ひなり。胜く仏の皮子を断぀。倖面は菩薩に䌌お内心は倜叉の劂し」文。双林最埌の倧涅槃経には「䞀切の江河必ず回曲有り。䞀切の女人必ず諂曲有り」文。又云はく「所有䞉千界の男子の諞の煩悩合集しお䞀人の女人の業障ず為る」等云云。倧華厳経の文に「胜断仏皮子」ず説かれお候は、女人は仏になるべき皮子をいれり。譬ぞば倧旱魃の時、虚空の䞭に倧雲をこり倧雚を倧地に䞋すに、かれたるが劂くなる無量無蟺の草朚花さき菓なる。然りず雖もいりたる皮はをひずしお、結句雚しげければくちうするが劂し。仏は倧雲の劂く、説教は倧雚の劂く、かれたるが劂くなる草朚を䞀切衆生に譬ぞたり。仏教の雚に最ひお五戒・十善・犅定等の功埳を埗るは花さき菓なるが劂し。雚ふれども、いりたる皮のをひずしお、かぞりおくちうするは、女人の仏教に遇ぞども、生死をはなれずしお、かぞりお仏法を倱ひ、悪道に堕぀るに譬ふ。是を「胜断仏皮子」ずは申すなり。涅槃経の文に、䞀切の江河のたがれるが劂く、女人も又たがれりず説かれたるは、氎はやわらかなる物なれば、石山なんどのこわき物にさぞられお氎の先ひるむゆぞに、かしここゝぞ行くなり。女人も亊是くの劂し。女人の心をば氎に譬ぞたり。心よわくしお氎の劂くなり。道理ず思ふ事も男のこわき心に倀ひぬればせかれおよしなき方ぞをもむく。又氎にゑがくにずゞたらざるが劂し。女人は䞍信を䜓ずするゆぞに、只今さあるべしず芋る事も、又しばらくあればあらぬさたになるなり。仏ず申すは正盎を本ずす。故にたがれる女人は仏になるべきにあらず。五障䞉埓ず申しお五぀のさはり䞉぀したがふ事あり。されば銀色女経には「䞉䞖の諞仏の県は倧地に萜぀ずも、女人は仏になるべからず」ず説かれ、倧論には「枅颚はずるず云ふずも女人の心はずりがたし」ず云ぞり。歀くの劂く諞経に嫌はれたりし女人を文殊垫利菩薩の劙の䞀字を説き絊ひしかば、応ちに仏になりき。あたりに䞍審なりし故に、宝浄䞖界の倚宝仏の第䞀の匟子智積菩薩・釈迊劂来の埡匟子の智慧第䞀の舎利北尊者、四十䜙幎の倧小乗経の意をもっお竜女の仏になるたじき由を難ぜしかども、終に叶はずしお仏になりにき。初成道の「胜断仏皮子」も双林最埌の「䞀切江河必有回曲」の文も砎れぬ。銀色女経䞊びに倧論の亀鏡も空しくなりぬ。又智積・舎利北は舌を巻き口を閉ぢ、人倩倧䌚は歓喜のあたりに掌を合はせたりき。是偏に劙の䞀字の埳なり。歀の南閻浮提の内に二千五癟の河あり。䞀々に皆たがれり。南閻浮提の女人、心のたがれるが劂し。䜆し嚑婆耶ず申す河あり。瞄を匕きはえたるが劂くしお盎ちに西海に入る。法華経を信ずる女人も亊埩是くの劂く、盎ちに西方浄土ぞ入るべし。是劙の䞀字の埳なり。

 劙ずは蘇生の矩なり。蘇生ず申すはよみがぞる矩なり。譬ぞば黄鵠の子死せるに、鶎の母子安ずなけば死せる子還りお掻り、鎆鳥氎に入らば魚蚌悉く死す。犀の角これにふるれば死せる者皆よみがぞるが劂く、爟前の経々にお仏皮をいりお死せる二乗・闡提・女人等、劙の䞀字を持ちぬれば、いれる仏皮も還りお生ずるが劂し。倩台云はく「闡提は心有り猶䜜仏すべし。二乗は智を滅す、心生ずべからず。法華胜く治す、埩称しお劙ず為す」云云。劙楜云はく「䜆倧ず名づけお劙ず名づけざるは、䞀には有心は治し易く無心は治し難し。治し難きを胜く治す、所以に劙ず称す」等云云。歀等の文の心は、倧方広仏華厳経・倧集経・倧般若経・倧涅槃経等は題目に倧の字のみありお劙の字なし。䜆生者を治しお死せる者をば治せず。法華経は死せる者をも治す。故に劙ず云ふ釈なり。されば諞経にしおは仏になるべき者も仏にならず、法華は仏になりがたき者すら尚仏になりぬ。仏になりやすき者は云ふにや及ぶず云ふ道理立ちぬれば、法華経をずかれお埌は諞経にをもむく人䞀人もあるべからず。

 而るに正像二千幎すぎお末法に入りお圓䞖の衆生の成仏埀生のずげがたき事は、圚䞖の二乗・闡提等にも癟千䞇億倍すぎたる衆生の、芳経等の四十䜙幎の経々に倀ひお生死をはなれんず思ふはいかゞ。はかなしはかなし。女人は圚䞖正像末総じお䞀切の諞仏の䞀切経の䞭に法華経をはなれお仏になるべからざる事を、霊山の聎衆ずしお道堎開悟し絊ぞる倩台智者倧垫定めお云はく「他経は䜆男に蚘しお女に蚘せず、今経は皆蚘す」等云云。釈迊劂来・倚宝仏・十方諞仏の埡前にしお、摩竭提囜王舎城の艮霊鷲山ず申す所にお、八箇幎の間説き絊ひし法華経を智者倧垫たのあたり聞こしめしけるに、我五十幎の䞀代聖教を説きをく事は皆衆生利益のためなり。䜆し其の䞭に四十二幎の経々には女人は仏になるべからずず説き、今法華経にしお女人の成仏をずくずなのらせ絊ひしを、仏滅埌䞀千五癟䜙幎に圓たりお、霊鷲山より東北十方八千里の山海をぞだおゝ摩蚶尞那ず申す囜あり。震旊囜是なり。歀の囜に仏の埡䜿ひずしお出䞖し絊ひ、倩台智者倧垫ずなのりお女人は法華経をはなれお仏になるべからずず定めさせ絊ひぬ。尞那囜より䞉千里ぞだおゝ東方に囜あり、日本囜ず名づけたり。挢土の倩台倧垫埡入滅二癟䜙幎ず申せしに、歀の囜に生たれお䌝教倧垫ずなのらせ絊ひお、秀句ず申す曞を造り絊ひしに「胜化所化倶に歎劫無し劙法の経力にお即身成仏す」ず竜女が成仏を定め眮き絊ぞり。而るに圓䞖の女人は即身成仏こそかたからめ、埀生極楜は法華を憑たば疑ひなし。譬ぞば江河の倧海に入るよりもたやすく、雚の空より萜぀るよりもはやくあるべき事なり。

 而るに日本囜の䞀切の女人は南無劙法蓮華経ずは唱ぞずしお、女人の埀生成仏をずげざる双芳経等によりお、匥陀の名号を䞀日に六䞇返十䞇返なんどずなうるは、仏の名号なれば巧みなるにはにたれども、女人䞍成仏䞍埀生の経によれる故に、いたづらに他の財を数えたる女人なり。これひずえに悪知識にたがらかされたるなり。されば日本囜の䞀切の女人の埡かたきは、虎狌よりも、山賊海賊よりも、父母の敵・ずわり等よりも、法華経をばをしえずしお念仏ををしうるこそ、䞀切の女人の第䞀の埡かたきなれ。女人の埡身ずしおは南無劙法蓮華経ず䞀日に六䞇十䞇千䞇等も唱ぞお、埌に暇あらばず時々は匥陀等の諞仏の名号をも口ずさみなるやうに申し絊はんこそ、法華経を信ずる女人におはあるべきに、圓䞖の女人は䞀期の間匥陀の名号をばしきりにずなぞ、念仏の仏事をばひたなくをこなひ、法華経をば぀や぀や唱ぞず䟛逊せず、或はわづかに法華経を持経者によたすれども、念仏者をば父母兄匟なんどのやうにをもひなし、持経者をば所埓眷属よりもかろくをもぞり。かくしおしかも法華経を信ずる由をなのるなり。抑浄埳婊人は二人の倪子の出家を蚱しお法華経をひろめさせ、竜女は「我倧乗の教を闡いお苊の衆生を床脱せん」ずこそ誓ひしが、党く他経蚈りを行じお歀の経を行ぜじずは誓はず。今の女人は偏に他経を行じお法華経を行ずる方をしらず。ずくずく心をひるがぞすべし。心をひるがぞすべし。南無劙法蓮華経、南無劙法蓮華経。
                        日 蓮 花抌
文氞䞉幎䞙寅正月六日

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