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顕謗法抄

埡曞1

顕謗法抄   匘長二幎  四䞀歳
                    本朝沙門 日蓮撰

 第䞀に八倧地獄の因果を明かし、第二に無間地獄の因果の軜重を明かし、第䞉に問答料簡を明かし、第四に行者の匘経の甚心を明かす。

 第䞀に八倧地獄の因果を明かさば、第䞀に等掻地獄ずは、歀の閻浮提の地の䞋䞀千由旬にあり。歀の地獄は瞊広斉等にしお䞀䞇由旬なり。歀の䞭の眪人はたがいに害心をいだく。若したたたた盞芋れば犬ず猿ずのあえるがごずし。各鉄の爪をもお互ひに぀かみさく。血肉既に尜きぬれば唯骚のみあり。或は獄卒手に鉄杖を取りお頭より足にいたるたで皆打ちくだく。身䜓くだけお沙のごずし。或は利刀をもお分々に肉をさく。然れども又よみがぞりよみがぞりするなり。歀の地獄の寿呜は、人間の昌倜五十幎をもお第䞀四王倩の䞀日䞀倜ずしお、四王倩の倩人の寿呜五癟歳なり。四王倩の五癟歳を歀の等掻地獄の䞀日䞀倜ずしお、其の寿呜五癟歳なり。歀の地獄の業因をいはゞ、ものゝ呜をた぀もの歀の地獄に堕぀。螻蟻蚊虻等の小虫を殺せる者も懺悔なければ必ず地獄に堕぀べし。譬ぞばはりなれども氎の䞊におけば沈たざるこずなきが劂し。又懺悔すれども懺悔の埌に重ねお歀の眪を䜜れば埌の懺悔には歀の眪きえがたし。譬ぞばぬすみをしお獄に入りぬるものゝ、しばらく経お埌に埡免を蒙りお獄を出ずれども、又重ねお盗みをしお獄に入りぬれば出でおゆるされがたきが劂し。されば圓䞖の日本囜の人は䞊䞀人より䞋䞇民に至るたで、歀の地獄をたぬかるゝ人は䞀人もありがたかるべし。䜕に持戒のおがぞをずれる持埋の僧たりずも、蟻虱なんどを殺さず、蚊虻をあやたたざるべきか。況んや其の倖、山野の鳥鹿、江海の魚鱗を日々に殺すものをや。䜕に況んや牛銬人等を殺す者をや。

 第二に黒瞄地獄ずは、等掻地獄の䞋にあり、瞊広は等掻地獄の劂し。獄卒、眪人をずらえお熱鉄の地にふせお、熱鉄の瞄をもお身にすみうお、熱鉄の斧をもお瞄に随っおきりさきけずる。又鋞を以おひく。又巊右に倧なる鉄の山あり。山の䞊に鉄の幢を立お鉄の瞄をはり、眪人に鉄の山ををゝせお瞄の䞊よりわたす。瞄より萜ちおくだけ、或は鉄のかなえに堕ずし入れおにらる。歀の苊は䞊の等掻地獄の苊よりも十倍なり。人間の䞀癟歳は第二の・利倩の䞀日䞀倜なり。其の寿䞀千歳なり。歀の倩の寿䞀千歳を䞀日䞀倜ずしお、歀の第二の地獄の寿呜䞀千歳なり。殺生の䞊に偞盗ずお、ぬすみをかさねたるもの歀の地獄にを぀。圓䞖の偞盗のもの、ものをぬすむ䞊、物の䞻を殺すもの歀の地獄に堕぀べし。

 第䞉に衆合地獄ずは、黒瞄地獄の䞋にあり。瞊広は䞊の劂し。倚くの鉄の山二぀づ぀盞向かぞり。牛頭・銬頭等の獄卒、手に棒を取っお眪人を駈っお山の間に入らしむ。歀の時䞡の山迫り来たりお合はせ抌す。身䜓くだけお血流れお地にみ぀。又皮々の苊あり。人間の二癟歳を第䞉の倜摩倩の䞀日䞀倜ずしお歀の倩の寿二千歳。歀の倩の寿を䞀日䞀倜ずしお歀の地獄の寿呜二千歳なり。殺生・偞盗の眪の䞊、邪婬ずお他人の぀たを犯す者歀の地獄の䞭に堕぀べし。而るに圓䞖の僧尌士女、倚分は歀の眪を犯す。殊に僧にこの眪倚し。士女は各々互ひにたがり又人目を぀ゝたざる故に歀の眪を犯さず。僧は䞀人ある故に婬欲ずがしきずころに、若し孕むこず有らば父たゞされおあらはれぬべきゆぞに、独ある女人をばをかさず。もしやかくるゝず他人の劻をうかゞひ、ふかくかくれんずをもふなり。圓䞖のほかたうずげなる僧の䞭に、こずに歀の眪又倚かるらんずおがゆ。されば倚分は圓䞖たうずげなる僧歀の地獄に堕぀べし。

 第四に叫喚地獄ずは、衆合の䞋にあり。瞊広前に同じ。獄卒悪声出だしお匓箭をもお眪人をいる。又鉄の棒を以お頭を打ちお、熱鉄の地をはしらしむ。或は熱鉄のいりだなにうちかぞしうちかぞし歀の眪人をあぶる。或は口を開けおわける銅のゆを入るれば、五臓やけお䞋より盎に出ず。寿呜をいはゞ、人間の四癟歳を第四の郜率倩の䞀日䞀倜ずす。又郜率倩の四千歳なり。郜率倩の四千歳の寿を䞀日䞀倜ずしお、歀の地獄の寿呜四千歳なり。歀の地獄の業因をいはゞ、殺生・偞盗・邪婬の䞊、飲酒ずお酒のむもの歀の地獄に堕぀べし。圓䞖の比䞘・比䞘尌・優婆塞・優婆倷の四衆の倧酒なる者、歀の地獄の苊免れがたきか。倧論には酒に䞉十六の倱をいだし、梵網経には酒盃をすゝめる者、五癟生に手なき身ず生たるずずかせ絊ふ。人垫の釈にはみゝずおいの者ずなるずみえたり。況んや酒をうりお人にあたえたる者をや。䜕に況んや酒に氎を入れおうるものをや。圓䞖の圚家の人々この地獄の苊たぬかれがたし。

 第五に倧叫喚地獄ずは、叫喚の䞋にあり。瞊広前に同じ。其の苊の盞は䞊の四぀の地獄の諞の苊に十倍しお重くこれをうく。寿呜の長短を云はゞ、人間の八癟歳は第五の化楜倩の䞀日䞀倜なり。歀の倩の寿八千歳なり。歀の倩の八千歳を䞀日䞀倜ずしお、歀の地獄の寿呜八千歳なり。殺生・偞盗・邪婬・飲酒の重眪の䞊に劄語ずおそらごずせる者歀の地獄に堕぀べし。圓䞖の諞人は蚭ひ賢人・䞊人なんどいはるゝ人々も、劄語せざる時はありずも、劄語をせざる日はあるべからず。蚭ひ日はありずも月はあるべからず。蚭ひ月はありずも幎はあるべからず。蚭ひ幎はありずも䞀期生劄語せざる者はあるべからず。若ししからば圓䞖の諞人䞀人もこの地獄をたぬかれがたきか。

 第六に焊熱地獄ずは、倧叫喚地獄の䞋にあり。瞊広前におなじ。歀の地獄に皮々の苊あり。若し歀の地獄の豆蚈りの火を閻浮提にをけらんに、䞀時にやけ尜きなん。況んや眪人の身の軟らかなるこずわたのごずくなるをや。歀の地獄の人は前の五぀の地獄の火を芋る事雪の劂し。譬ぞば人間の火の薪の火よりも鉄銅の火の熱きが劂し。寿呜の長短は人間の千六癟歳を第六の他化倩の䞀日䞀倜ずしお歀の倩の寿千六癟歳なり。歀の倩の千六癟歳を䞀日䞀倜ずしお、歀の地獄の寿呜䞀千六癟歳なり。業因を云はゞ、殺生・偞盗・邪婬・飲酒・劄語の䞊、邪芋ずお因果なしずいう者歀の䞭に堕぀べし。邪芋ずは、有る人の云はく、人飢えお死ぬれば倩に生たるべし等云云。総じお因果をしらぬ者を邪芋ず申すなり。䞖間の法には慈悲なき者を邪芋の者ずいう。圓䞖の人々歀の地獄を免れがたきか。

 第䞃に倧焊熱地獄ずは、焊熱の䞋にあり。瞊広前の劂し。前の六぀の地獄の䞀切の諞苊に十倍しお重く受くるなり。其の寿呜は半䞭劫なり。業因を云はゞ、殺生・偞盗・邪婬・飲酒・劄語・邪芋の䞊に浄戒の比䞘尌ををかせる者、歀の䞭に堕぀べし。又比䞘、酒を以お䞍邪婬戒を持おる婊女をたがらかし、或は財物をあたぞお犯せるもの歀の䞭に堕぀べし。圓䞖の僧の䞭に倚く歀の重眪あるなり。倧悲経の文に、末代には士女は倚くは倩に生じ、僧尌は倚くは地獄に堕぀べしずずかれたるはこれおいの事か。心あらん人々ははづべしはづべし。総じお䞊の䞃倧地獄の業因は諞経論をもお勘え芋るに圓䞖日本囜の四衆にあお芋るに、歀の䞃倧地獄をはなるべき人を芋ず、又きかず。涅槃経に云はく「末代に入りお人間に生ぜん者は爪䞊の土の劂し。䞉悪道に堕぀るものは十方䞖界の埮塵の劂し」ず説かれたり。若し爟らば我等が父母兄匟等の死ぬる人は皆䞊の䞃倧地獄にこそ堕ち絊ひおは候らめ。あさたしずもいうばかりなし。竜ず蛇ず鬌神ず仏・菩薩・聖人をば未だ芋ず、たゞをずにのみこれをきく。圓䞖に䞊の䞃倧地獄の業を造らざるものをば未だ芋ず、又をずにもきかず。而るに我が身よりはじめお䞀切衆生䞃倧地獄に堕぀べしずをもえる者䞀人もなし。蚭ひ蚀には堕぀べきよしをさえづれども、心には堕぀べしずもをもはず。又僧尌士女、地獄の業をば犯すずはをもえども、或は地蔵菩薩等の菩薩を信じ、或は阿匥陀仏等の仏を恃み、或は皮々の善根を修したる者もあり。皆をもはく、我はかゝる善根をもおればなんどうちをもひお地獄をもをぢず。或は宗々を習ぞる人々は、各々の智分をたのみお又地獄の因ををぢず。而るに仏菩薩を信じたるも、愛子倫婊なんどをあいし、父母䞻君なんどをうやたうには雲泥なり。仏・菩薩をばかろくをもえるなり。されば圓䞖の人々の、仏・菩薩を恃みぬれば、宗々を孊したれば地獄の苊はたぬかれなんなんどをもえるは僻案にや。心あらん人々はよくよくはかりをもうべきか。

 第八に倧阿錻地獄ずは、又は無間地獄ず申すなり。欲界の最底倧焊熱地獄の䞋にあり。歀の地獄は瞊広八䞇由旬なり、倖に䞃重の鉄の城あり。地獄の極苊は䞔く之を略す。前の䞃倧地獄䞊びに別凊の䞀切の諞苊を以お䞀分ずしお、倧阿錻地獄の苊、䞀千倍勝れたり。歀の地獄の眪人は倧焊熱地獄の眪人を芋る事、他化自圚倩の楜しみの劂し。歀の地獄の銙のくさゝを人かぐならば、四倩䞋・欲界・六倩の倩人皆しゝなん。されども出山・没山ず申す山、歀の地獄の臭き気ををさえお、人間ぞ来たらせざる故に、歀の䞖界の者死せずず芋ぞぬ。若し仏歀の地獄の苊を具に説かせ絊はゞ、人聎きお血をはいお死すべき故に、くわしく仏説き絊はずずみぞたり。歀の無間地獄の寿呜の長短は䞀䞭劫なり。䞀䞭劫ず申すは、歀の人寿無量歳なりしが癟幎に䞀寿を枛じ、又癟幎に䞀寿を枛ずるほどに、人寿十歳の時に枛ずるを䞀枛ず申す。又十歳より癟幎に䞀寿を増し、又癟幎に䞀寿を増する皋に、八䞇歳に増するを䞀増ず申す。歀の䞀増䞀枛の皋を小劫ずしお、二十の増枛を䞀䞭劫ずは申すなり。歀の地獄に堕ちたる者、これ皋久しく無間地獄に䜏しお倧苊をうくるなり。業因を云はゞ、五逆眪を造る人歀の地獄に堕぀べし。五逆眪ず申すは䞀に殺父、二に殺母、䞉に殺阿矅挢、四に出仏身血、五に砎和合僧なり。今の䞖には仏たしたさず。しかれば出仏身血あるべからず。和合僧なければ砎和合僧なし。阿矅挢なければ殺阿矅挢これなし。䜆殺父殺母の眪のみありぬべし。しかれども王法のいたしめきびしくあるゆぞに、歀の眪をかしがたし。若し爟らば、圓䞖には阿錻地獄に堕぀べき人すくなし。䜆し盞䌌の五逆眪これあり。朚画の仏像・堂塔等をやき、かの仏像等の寄進の所をうばいずり、卒兜婆等をきりやき、智人を殺しなんどするもの倚し。歀等は倧阿錻地獄の十六の別凊に堕぀べし。されば圓䞖の衆生十六の別凊に堕぀るもの倚きか。又謗法の者この地獄に堕぀べし。

 第二に無間地獄の因果の軜重を明かさば、問うお云はく、五逆眪より倖の眪によりお無間地獄に堕ちんこずあるべしや。答ぞお云はく、誹謗正法の重眪なり。問うお云はく、蚌文劂䜕。答ぞお云はく、法華経第二に云はく「若し人信ぜずしお歀の経を毀謗せば乃至其の人呜終しお阿錻獄に入らん」等云云。歀の文に謗法は阿錻地獄の業ず芋ぞたり。問うお云はく、五逆ず謗法ず眪の軜重劂䜕。答ぞお云はく、倧品経に云はく「舎利北仏に癜しお蚀さく、䞖尊五逆眪ず砎法眪ず盞䌌するや。仏舎利北に告げたたはく、応に盞䌌ず蚀ふべからず。所以は䜕ん、若し般若波矅蜜を砎れば則ち十方諞仏の䞀切智䞀切皮智を砎るに為んぬ。仏宝を砎るが故に、法宝を砎るが故に、僧宝を砎るが故に。䞉宝を砎るが故に則ち䞖間の正芋を砎す。䞖間の正芋を砎れば○則ち無量無蟺阿僧祇の眪を埗るなり。無量無蟺阿僧祇の眪を埗已はっお則ち無量無蟺阿僧祇の憂苊を受くるなり」文。又云はく「砎法の業の因瞁集むるが故に無量癟千䞇億歳倧地獄の䞭に堕぀。歀の砎法人の茩は䞀倧地獄より䞀倧地獄に至り、若し劫火起こる時は他方の倧地獄の䞭に至る。是くの劂く十方に遍くしお圌の間に劫火起こるが故に、圌より死するも砎法の業の因瞁未だ尜きざるが故に、還っお是の間の倧地獄の䞭に来たる」等云云。法華経第䞃に云はく「四衆の䞭に瞋恚を生じ心䞍浄なる者有り。悪口眵詈しお蚀はく、是の無智の比䞘ず。或は杖朚瓊石を以お之を打擲す。乃至千劫阿錻地獄に斌お倧苊悩を受く」等云云。歀の経文の心は、法華経の行者を悪口し、及び杖を以お打擲せるもの、其の埌に懺悔せりずいぞども、眪いただ枛せずしお千劫阿錻地獄に堕ちたりず芋えぬ。懺悔せる謗法の眪すら五逆眪に千倍せり。況んや懺悔せざらん謗法にをいおは阿錻地獄を出づる期かたかるべし。故に法華経第二に云はく「経を読誊し曞持するこず有らん者を芋お軜賀憎嫉しお結恚を懐かん。乃至其の人呜終しお阿錻獄に入り、䞀劫を具足しお劫尜きなば曎生たれん。是くの劂く展転しお無数劫に至らん」等云云。
 第䞉に問答料簡を明かさば、問うお云はく、五逆眪ず謗法眪ずの軜重はしんぬ。謗法の盞貌劂䜕。答ぞお云はく、倩台智者倧垫の梵網経の疏に云はく「謗ずは背くなり」等云云。法に背くが謗法におはあるか。倩芪の仏性論に云はく「若し憎むは背くなり」等云云。この文の心は正法を人に捚おさするが謗法におあるなり。問うお云はく、委现に盞貌をしらんずおもう。あらあらしめすべし。答ぞお云はく、涅槃経経五に云はく「若し人有っお劂来は無垞なりず蚀はん。云䜕ぞ是の人舌堕萜せざらん」等云云。歀の文の心は仏を無垞ずいはん人は舌堕萜すべしず云云。問うお云はく、諞の小乗経に仏を無垞ず説かるゝ䞊、又所化の衆皆無垞ず談じき。若し爟らば、仏䞊びに所化の衆の舌堕萜すべしや。答ぞお云はく、小乗経の仏を小乗経の人が無垞ずずき談ずるは舌たゞれざるか。倧乗経に向かっお仏を無垞ず談じ、小乗経に察しお倧乗経を砎するが舌は堕萜するか。歀をもおをもうに、おのれが䟝経には随えども、すぐれたる経を砎するは砎法ずなるか。若し爟らば、蚭ひ芳経・華厳経等の暩倧乗経の人々、所䟝の経の文の劂く修行すずも、かの経にすぐれたる経々に随はず、又すぐれざる由を談ぜば謗法ずなるべきか。されば芳経等の経の劂く法をえたりずも、芳経等を砎せる経の出来したらん時、其の経に随はずば砎法ずなるべきか。小乗経を以おなぞらえお心うべし。問うお云はく、双芳経等に乃至十念即埗埀生なんどずかれお候が、圌のけうの教ぞの劂く十念申しお埀生すべきを、埌の経を以お申しやぶらば謗法におは候たじきか。答ぞお云はく、仏、芳経等の四十䜙幎の経々を束ねお未顕真実ず説かせ絊ひぬれば、歀の経文に随ふお乃至十念即埗埀生等は実には埀生しがたしず申す。歀の経文なくば謗法ずなるべし。問うお云はく、或人云はく、無量矩経の「四十䜙幎未顕真実」の文はあぞお四十䜙幎の䞀切の経々䞊びに文々句々を皆未顕真実ず説き絊ふにはあらず。䜆四十䜙幎の経々に凊々に決定性の二乗を氞䞍成仏ずきらはせ絊ひ、釈迊劂来を始成正芚ず説き絊ひしを、其の蚀ばかりをさしお未顕真実ずは申すなり。あぞお䜙事にはあらず。而るをみだりに四十䜙幎の文を芋お、芳経等の凡倫のために九品埀生なんどを説きたるを、劄りに埀生はなき事なりなんど抌ぞ申すは、あにおそろしき謗法の者にあらずやなんど申すはいかに。答ぞお云はく、歀の料簡は東土の埗䞀が料簡に䌌たり。埗䞀が云はく、未顕真実ずは決定性の二乗を、仏、爟前の経にしお氞䞍成仏ずずかれしを未顕真実ずは嫌はるゝなり。前四味の䞀切には亘るべからずず申しき。䌝教倧垫は前四味に亘りお文々句々に未顕真実ず立お絊ひき。さればこの料簡は叀の謗法の者の料簡に䌌たり。䜆し䞔く汝等が料簡に随ひお尋ね明らめん。問ふ、法華已前に二乗䜜仏を嫌ひけるを今未顕真実ずいうずならば、先づ決定性の二乗を仏の氞䞍成仏ず説かせ絊ひし凊々の経文ばかりは、未顕真実の仏の劄語なりず承䌏せさせ絊ふか。さおは仏の劄語は勿論なり。若し爟らば、劄語の人の申すこずは有無共に甚いぬ事におあるぞかし。決定性の二乗氞䞍成仏の語ばかり劄語ずなり、若し䜙の菩薩凡倫の埀生成仏等は実語ずなるべきならば、信甚しがたき事なり。譬ぞば東方を西方ず劄語し申す人は西方を東方ず申すべし。二乗を氞䞍成仏ず説く仏は䜙の菩薩の成仏をゆるすも又劄語にあらずや。五乗は䜆䞀仏性なり。二乗の仏性をかくし、菩薩凡倫の仏性をあらはすは、返りお菩薩凡倫の仏性をかくすなり。有る人云はく、四十䜙幎未顕真実ずは、成仏の道ばかり未顕真実なり。埀生等は未顕真実にはあらず。又難じお云はく、四十䜙幎が間の説の成仏を未顕真実ず承䌏せさせ絊はゞ、双芳経に云ふ「正芚を取らじ」「成仏より已来凡そ十劫を歎たり」等の文は未顕真実ず承䌏せさせ絊ふか。若し爟らば、四十䜙幎の経々にしお法蔵比䞘の阿匥陀仏になり絊はずば、法蔵比䞘の成仏すでに劄語なり。若し成仏劄語ならば䜕れの仏か行者を迎ぞ絊ふべきや。又かれ歀の難を䌚通しお云はん、四十䜙幎が間は成仏はなし。阿匥陀仏は今の成仏にはあらず、過去の成仏なり等云云。今難じお云はく、今日の四十䜙幎の経々にしお実の凡倫の成仏を蚱されずば、過去遠々劫の四十䜙幎の暩経におも成仏叶ひがたきか。䞉䞖の諞仏の説法の儀匏皆同じきが故なり。
或は云はく「疟く無䞊菩提を成ずるこずを埗ず」ずずかるれば、四十䜙幎の経々におは疟くこそ仏にはならねども、遅く劫を経おはなるか。難じお云はく、次䞋の倧荘厳菩薩等の領解に云はく「䞍可思議無量無蟺阿僧祇劫を過ぐるずも終に無䞊菩提を成ずるこずを埗ず」等云云。歀の文の劂くならば劫を経おも爟前の経蚈りにおは成仏はかたきか。有るひは云ふ、華厳宗の料簡に云はく、四十䜙幎の内には華厳経蚈りは入るべからず。華厳経にすでに埀生成仏歀あり。なんぞ華厳経を行じお埀生成仏をずげざらん。答ぞお云はく、四十䜙幎の内に華厳経入るべからずずは華厳宗の人垫の矩なり。無量矩経には正しく四十䜙幎の内に華厳海空ず名目を呌び出だしお、四十䜙幎の内にかずぞ入れられたり。人垫を本ずせば仏を背くになりぬ。問うお云はく、法華経を離れお埀生成仏をずげずば、仏䞖に出でさせ絊ひおは䜆法華経蚈りをこそ説き絊はめ。なんぞわづらはしく四十䜙幎の経々を説かせ絊ふや。答ぞお云はく、歀の難は仏自ら答ぞ絊ぞり。「若し䜆仏乗を讃せば衆生苊に没圚しお法を砎しお信ぜざるが故に䞉悪道に堕ちなん」等の経文これなり。問うお云はく、いかなれば爟前の経をば衆生謗ぜざるや。答ぞお云はく、爟前の経々は䞇差なれども、束ねお歀を論ずれば随他意ず申しお衆生の心をずかれおはんべり。故に違する事なし。譬ぞば氎に石をなぐるにあらそうこずなきがごずし。又しなじなの説教はんべれども九界の衆生の心を出でず。衆生の心は皆善に぀け悪に぀けお迷を本ずするゆぞに仏にはならざるか。

 問うお云はく、衆生謗ずべきゆぞに仏最初に法華経をずき絊はずしお、四十䜙幎の埌に法華経をずき絊はゞ、汝なんぞ圓䞖に暩経をばずかずしお、巊右なく法華経をずいお人に謗をなさせお悪道に堕すや。答ぞお云はく、仏圚䞖には仏菩提暹の䞋に坐し絊ひお機をかゞみ絊ふに、圓時法華経を説くならば、衆生謗じお悪道に堕ちぬべし。四十䜙幎すぎお埌にずかば、謗ぜずしお初䜏䞍退乃至劙芚にのがりぬべしず知芋したしたしき。末代濁䞖には圓機にしお初䜏の䜍に入るべき人は䞇に䞀人もありがたかるべし。又胜化の人も仏にあらざれば、機をかゞみん事もこれかたし。されば逆瞁順瞁のために、先づ法華経を説くべしず仏ゆるし絊ぞり。䜆し又滅埌なりずも、圓機衆になりぬべきものには、先づ暩経をずく事もあるべし。又悲を先ずする人は先づ暩経をずく、釈迊仏のごずし。慈を先ずする人は先づ実経をずくべし、䞍軜菩薩のごずし。又末代の凡倫はなにずなくずも悪道を免れんこずはかたかるべし。同じく悪道に堕぀るならば、法華経を謗ぜさせお堕すならば、䞖間の眪をもお堕ちたるにはにるべからず。「聞法生謗堕斌地獄勝斌䟛逊恒沙仏者」等の文のごずし。歀の文の心は、法華経をばうじお地獄に堕ちたるは、釈迊仏・阿匥陀仏等の恒河沙の仏を䟛逊し、垰䟝枇仰する功埳には癟千䞇倍すぎたりずずかれたり。問うお云はく、䞊の矩のごずくならば、華厳・法盞・䞉論・真蚀・浄土等の祖垫はみな謗法に堕すべきか。華厳宗には華厳経は法華経には雲泥超過せり。法盞・䞉論もおかくのごずし。真蚀宗には日本囜に二の流あり。東寺の真蚀は法華経は華厳経にをずれり。䜕に況んや倧日経にをいおをや。倩台の真蚀には倧日経ず法華経ずは理は斉等なり。印・真蚀等は超過せりず云云。歀等は皆悪道に堕぀べしや。答ぞお云はく、宗をたお、経々の勝劣を刀ずるに二の矩あり。䞀は䌌砎、二は胜砎なり。䞀に䌌砎ずは、他の矩は吉しずおもえども歀をはす。かの正矩を分明にあらはさんがためか。二に胜砎ずは、実に他人の矩の勝れたるをば匁ぞずしお、迷っお我が矩すぐれたりずをもひお、心䞭よりこれを砎するをば胜砎ずいう。されば圌の宗々の祖垫に䌌砎・胜砎の二の矩あるべし。心䞭には法華経は諞経に勝れたりず思ぞども、䞔く違しお法華経の矩を顕はさんずをもひお、これをはする事あり。提婆達倚・阿闍䞖王・諞の倖道が仏のかたきずなりお仏埳を顕はし、埌には仏に垰せしがごずし。又実の凡倫が仏のかたきずなりお悪道に堕぀る事これ倚し。されば諞宗の祖垫の䞭に回心の筆をかゝずば、謗法の者悪道に堕ちたりずしるべし。䞉論の嘉祥・華厳の柄芳・法盞の慈恩・東寺の匘法等は回心の筆これあるか。よくよく尋ねならうべし。問うお云はく、たこずに今床生死をはなれんずをもはんに、なにものをかいずひ、なにものをか願ふべきや。答ふ、諞の経文には女人等をいずふべしずみぞたれども、双林最埌の涅槃経に云はく「菩薩是の身に無量の過患具足充満すず芋るず雖も、涅槃経を受持せんず欲するを為おの故に猶奜く将護しお乏少ならしめず。菩薩悪象等に斌おは心に恐怖するこずなかれ。悪知識に斌おは怖畏の心を生ぜよ。䜕を以おの故に。是悪象等は唯胜く身を壊りお心を壊るこず胜はず。悪知識は二倶に壊るが故に。悪象の若きは唯䞀身を壊る。悪知識は無量の身無量の善心を壊る。悪象の為に殺されおは䞉趣に至らず。悪友の為に殺されおは必ず䞉趣に至る」等云云。歀の経文の心は、埌䞖を願はん人は䞀切の悪瞁を恐るべし。䞀切の悪瞁よりは悪知識ををそるべしずみえたり。されば倧荘厳仏の末の四の比䞘は、自ら悪法を行じお十方の倧阿錻地獄を経るのみならず、六癟億人の檀那等をも十方の地獄に堕ずしぬ。鎊掘摩矅は摩尌跋陀が教ぞに随っお九癟九十九人の指をきり、結句、母䞊びに仏をがいせんずぎす。善星比䞘は仏の埡子、十二郚経を受持し、四犅定をえ、欲界の結を断じたりしかども、苊埗倖道の法を習ふお生身に阿錻地獄に堕ちぬ。提婆が六䞇蔵・八䞇蔵を暗んじたりしかども、倖道の五法を行じお珟に無間に堕ちにき。阿闍䞖王の父を殺し母を害せんず擬せし、倧象を攟っお仏をうしないたおた぀らんずせしも悪垫提婆が教ぞなり。倶䌜利比䞘が舎利北・目連をそしりお生身に阿錻に堕せし、倧族王の五竺の仏法僧をほろがせし、倧族王の舎匟は加湿匥矅囜の王ずなりお、健駄矅囜の卒塔婆・寺塔䞀千六癟所をうしなひし、金耳囜王の仏法をほろがせし、波瑠璃王の九千九十䞇人の人をころしお血ながれお池をなせし、蚭賞迊王の仏法を滅し菩提暹をきり根をほりし、呚の宇文王の四千六癟䜙所の寺院を倱ひ、二十六䞇六癟䜙の僧尌を還俗せしめし、歀等は皆悪垫を信じ悪鬌其の身に入りし故なり。問うお云はく、倩竺・震旊は倖道が仏法をほろがし、小乗が倧乗をやぶるずみえたり。歀の日本囜もしかるべきか。答ぞお云はく、月支・尞那には倖道あり、小乗あり。歀の日本囜には倖道なし、小乗の者なし。玀兞博士等これあれども、仏法の敵ずなるものこれなし。小乗の䞉宗これあれども、圌の宗を甚いお生死をはなれんずおもはず。䜆倧乗を心うる才芚ずをもえり。䜆し歀の囜には倧乗の五宗のみこれあり。人々皆をもえらく、圌の宗々にしお生死をはなるべしずをもう故に、あらそいも倚くいできたり。又檀那の垰䟝も倚くあるゆぞに利逊の心もふかし。

 第四に行者仏法を匘むる甚心を明かさば、倫仏法をひろめんずをもはんものは必ず五矩を存じお正法をひろむべし。五矩ずは、䞀には教、二には機、䞉には時、四には囜、五には仏法流垃の前埌なり。

 第䞀に教ずは、劂来䞀代五十幎の説教は倧小・暩実・顕密の差別あり。華厳宗には五教を立お䞀代ををさめ、其の䞭には華厳・法華を最勝ずし、華厳・法華の䞭に華厳経を以お第䞀ずす。南䞉北䞃䞊びに華厳宗の祖垫・日本囜の東寺の匘法倧垫歀の矩なり。法盞宗は䞉時に䞀代ををさめ、其の䞭に深密・法華経を䞀代の聖教にすぐれたりずす。深密・法華の䞭、法華経は了矩経の䞭の䞍了矩経、深密経は了矩経の䞭の了矩経なり。䞉論宗に又二蔵䞉時を立぀。䞉時の䞭の第䞉、䞭道教ずは、般若・法華なり。般若・法華の䞭には般若最第䞀なり。真蚀宗には日本囜に二の流あり。東寺流は匘法倧垫十䜏心を立お、第八法華・第九華厳・第十真蚀。法華経は倧日経に劣るのみならず猶華厳経に䞋るなり。倩台の真蚀は慈芚倧垫等、倧日経ず法華経ずは広略の異。法華経は理秘密、倧日経は事理倶密なり。浄土宗には聖道・浄土、難行・易行、雑行・正行を立おたり。浄土の䞉郚経より倖の法華経等の䞀切経は難行・聖道・雑行なり。犅宗には二の流あり。䞀流は䞀切経、䞀切の宗の深矩は犅宗なり。䞀流は劂来䞀代の聖教は皆蚀説、劂来の口茪の方䟿なり。犅宗は劂来の意密、蚀説におよばず、教倖の別䌝なり。倶舎宗・成実宗・埋宗は小乗宗なり。倩竺・震旊には小乗宗の者、倧乗を砎する事これ倚し。日本囜には其の矩なし。

 問うお云はく、諞宗の異矩区なり。䞀々に其の謂はれありお埗道をなるべきか。又諞宗皆謗法ずなりお䞀宗蚈り正矩ずなるべきか。答ぞお云はく、異論盞違ありずいえども皆埗道なるか。仏の滅埌四癟幎にあたりお健駄矅囜の迊匐色迊王、仏法を貎み、䞀倏、僧を䟛し仏法をずいしに䞀々の僧異矩倚し。歀の王䞍審しお云はく、仏説は定んで䞀ならん、終に脇尊者に問ふ。尊者答ぞお云はく、金杖を折っお皮々の物に぀くるに、圢は別なれども金杖は䞀なり。圢の異なるをば諍ふずいぞども、金たる事をあらそはず。門々䞍同なれば、いりかどをば諍ぞども、入理は䞀なり等云云。又求那跋摩云はく、諞論各異端なれども修行の理は二無し。偏執に是非有りずも達者は違諍なし等云云。又五癟矅挢の真因各異なれども同じく聖理をえたり。倧論の四悉檀の䞭の察治悉檀、摂論の四意趣の䞭の衆生意楜意趣、歀等は歀の善を嫌ひ、歀の善をほむ。檀戒進等䞀々にそしり、䞀々にほむる、皆埗道をなる。歀等を以おこれを思ふに、護法・青匁のあらそい、智光・戒賢の空・䞭、南䞉北䞃の頓挞䞍定、䞀時・二時・䞉時・四時・五時、四宗・五宗・六宗、倩台の五時、華厳の五教、真蚀教の東寺・倩台の諍、浄土宗の聖道・浄土、犅宗の教倖・教内、入門は差別せりずいふずも実理に入る事は䜆䞀なるべきか。 

 難じお云はく、華厳の五教、法盞・䞉論の䞉時、犅宗の教倖、浄土宗の難行・易行、南䞉北䞃の五時等、門はこずなりずいぞども入理䞀にしお、皆仏意に叶ひ謗法ずならずずいはゞ、謗法ずいふ事あるべからざるか。 謗法ずは法に背くずいう事なり。法に背くず申すは、小乗は小乗経に背き、倧乗は倧乗経に背く。法に背かばあに謗法ずならざらん。謗法ずならばなんぞ苊果をたねかざらん。歀の道理にそむくこれひず぀。倧般若経に云はく「般若を謗ずる者は十方の倧阿錻地獄に堕぀べし」ず。法華経に云はく「若し人信ぜず乃至其の人呜終しお阿錻獄に入らん」ず。涅槃経に云はく「䞖に難治の病䞉あり。䞀には四重、二には五逆、䞉には謗倧乗なり」ず。歀等の経文あにむなしかるべき。歀等は蚌文なり。されば無垢論垫・倧慢婆矅門・熈連犅垫・嵩霊法垫等は正法を謗じお、珟身に倧阿錻地獄に堕ち、舌口䞭に爛れたり。これは珟蚌なり。倩芪菩薩は小乗の論を䜜っお諞倧乗経をはしき。埌に無著菩薩に察しお歀の眪を懺悔せんがために舌を切らんずくい絊ひき。謗法もし眪ずならずんば、いかんが千郚の論垫懺悔をいたすべき。闡提ずは倩竺の語、歀には䞍信ず翻ず。䞍信ずは、䞀切衆生悉有仏性を信ぜざるは闡提の人ず芋ぞたり。䞍信ずは謗法の者なり。恒河の䞃皮の衆生の第䞀は䞀闡提謗法垞没の者なり。第二には五逆謗法垞没等の者なり。あに謗法ををそれざらん。答ぞお云はく、謗法ずは、只由なく仏法を謗ずるを謗法ずいうか。我が宗をたおんがために䜙法を謗ずるは謗法にあらざるか。摂論の四意趣の䞭の衆生意楜意趣ずは、仮什人ありお䞀生の間䞀善をも修せず䜆悪を䜜る者あり。而るに小瞁にあひお䜕れの善におもあれ䞀善を修せんず申す。これは随喜讃歎すべし。又善人あり、䞀生の間たゞ䞀善を修す。而るを他の善ぞう぀さんがためにそのぜんをそしる。䞀事の䞭に斌お或は呵し或は讃ずずいうこれなり。倧論の四悉檀の䞭の察治悉檀又これおなじ。浄名経の匟呵ず申すは阿含経の時ほめし法をそしるなり。歀等を以おおもふに、或は衆生倚く小乗の機あれば、倧乗を謗りお小乗経に信心をたし、或は衆生倚く倧乗の機なれば、小乗経をそしりお倧乗経に信心をあ぀くす。或は衆生匥陀仏に瞁あれば、諞仏をそしりお匥陀に信心をたさしめ、或は衆生倚く地蔵に瞁あれば、諞菩薩をそしりお地蔵をほむ。或は衆生倚く華厳経に瞁あれば、諞経をそしりお華厳経をほむ。或は衆生倧般若経に瞁あれば、諞経をそしりお倧般若経をほむ。或は衆生法華経、或は衆生倧日経等、同じく心うべし。機を芋お或は讃め或は毀る、共に謗法ずならず。而るを機をしらざる者、みだりに或は讃め或は呰るは謗法ずなるべきか。䟋せば華厳宗・䞉論・法盞・倩台・真蚀・犅・浄土等の諞垫の諞経をはしお我が宗を立぀るは謗法ずならざるか。

 難じお云はく、宗を立おんに諞経諞宗を砎し、仏・菩薩を讃むるに仏・菩薩を砎し、他の善根を修せしめんがためにこの善根をはする、くるしからずば、阿含等の諞の小乗経に華厳経等の諞倧乗経をはしたる文ありや。華厳経に法華・倧日経等の諞倧乗経をはしたる文これありや。答ぞお云はく、阿含小乗経に諞倧乗経をはしたる文はなけれども、華厳経には二乗・倧乗・䞀乗をあげお二乗・倧乗をはし、涅槃経には諞倧乗経をあげお涅槃経に察しおこれをはす。密厳経には䞀切経䞭王ず説き、無量矩経には四十䜙幎未顕真実ずずかれ、阿匥陀経には念仏に察しお諞経を小善根ずずかる。これらの䟋䞀にあらず。故に又圌の経々による人垫、皆歀の矩を存ぜり。歀等をもお思ふに、宗を立぀る方は我が宗に察しお諞経を砎るはくるしからざるか。

 難じお云はく、華厳経には小乗・倧乗・䞀乗ずあげ、密厳経には䞀切経䞭の王ずずかれ、涅槃経には是諞倧乗ずあげ、阿匥陀経には念仏に察しお諞経小善根ずはずかれたれども、無量矩経のごずく四十䜙幎ず幎限を指しお、其の間の倧郚の諞経を、阿含・方等・般若・華厳等の名をよびあげお勝劣をずける事これなし。涅槃経の是諞倧乗の文蚈りこそ、双林最埌の経ずしお是諞倧乗ずずかれたれば、涅槃経には䞀切経は嫌はるかずおがうれども、是諞倧乗経ず挙げお、次䞋に諞倧乗経を列ねたるに、十二郚修倚矅・方等・般若等ずあげたり。無量矩経・法華経をば茉せず。䜆し無量矩経に挙ぐるずころは四十䜙幎の阿含・方等・般若・華厳経をあげたり。いただ法華経・涅槃経の勝劣はみぞず。密厳に䞀切経䞭王ずはあげたれども、䞀切経をあぐる䞭に華厳・勝鬘等の諞経の名をあげお䞀切経䞭王ずずく。故に法華経等ずはみぞず。阿匥陀経の小善根は時節もなし小善根の盞貌もみぞず。たれかしる、小乗経を小善根ずいうか。又人倩の善根を小善根ずいうか。又芳経・双芳経の所説の諞善を小善根ずいうか。いただ䞀代を念仏に察しお小善根ずいうずはきこえず。又倧日経・六波矅蜜経等の諞の秘教の䞭にも、䞀代の䞀切経を嫌ふおその経をほめたる文はなし。䜆し無量矩経蚈りこそ前四十䜙幎の諞経を嫌ひ、法華経䞀経に限りお、已説の四十䜙幎・今説の無量矩経・圓説の未来にずくべき涅槃経を嫌ふお法華経蚈りをほめたり。釈迊劂来・過去珟圚未来の䞉䞖の諞仏、䞖にいで絊ひお各々䞀切経を説き絊ふに、いずれの仏も法華経第䞀なり。䟋せば䞊郎・䞋郎䞍定なり。田舎にしおは、癟姓・郎埓等は䟍を䞊郎ずいふ。掛陜にしお、源平等已䞋を䞋郎ずいふ。䞉家を䞊郎ずいふ。又䞻を王ずいはゞ癟姓も宅䞭の王なり。地頭・領家等も又村・郷・郡・囜の王なり。しかれども倧王にはあらず。小乗経には無為涅槃の理が王なり。小乗の戒定等に察しお智慧は王なり。諞倧乗経には䞭道の理が王なり。又華厳経は円融盞即の王、般若経は空理の王、倧集経は守護正法の王、薬垫経は薬垫劂来の別願を説く経の䞭の王、双芳経は阿匥陀仏の四十八願を説く経の䞭の王、倧日経は印・真蚀を説く経の䞭の王、䞀代䞀切経の王にはあらず。法華経は真諊俗諊・空仮䞭・印真蚀・無為の理・十二倧願・四十八願、䞀切諞経の所説の所詮の法門の倧王なり。これ教をしれる者なり。

 而るを善無畏・金剛智・䞍空・法蔵・柄芳・慈恩・嘉祥・南䞉北䞃・曇鞞・道綜・善導・達磚等の、我が所立の䟝経を䞀代第䞀ずいえるは教をしらざる者なり。䜆し䞀切の人垫の䞭には倩台智者倧垫䞀人教をしれる人なり。曇鞞・道綜等の聖道浄土・難行易行・正行雑行は、源十䜏毘婆沙論に䟝る。圌の本論に難行の内に法華・真蚀等を入れるず謂ぞるは僻案なり。論䞻の心ず論の始䞭終をしらざる倱あり。慈恩が深密経の䞉時に䞀代ををさめたる事、又本経の䞉時に䞀切経の摂らざる事をしらざる倱あり。法蔵・柄芳等が五教に䞀代ををさむる䞭に、法華経・華厳経を円教ず立お、又華厳経は法華経に勝れたりずをもぞるは、所䟝の華厳経に二乗䜜仏・久遠実成をあかさざるに蚘小・久成ありずをもひ、華厳超過の法華経を我が経に劣るず謂ふは僻芋なり。䞉論の嘉祥の二蔵等、又法華経に般若経すぐれたりずをもふ事は僻案なり。善無畏等が倧日経は法華経に勝れたりずいふ。法華経の心をしらざるのみならず、倧日経をもしらざる者なり。

 問うお云はく、歀等皆謗法ならば悪道に堕ちたるか劂䜕。答ぞお云はく、謗法に䞊䞭䞋雑の謗法あり。慈恩・嘉祥・柄芳等が謗法は䞊䞭の謗法か。其の䞊自身も謗法ずしれるかの間、悔い還す筆これあるか。又他垫をはするに二あり。胜砎・䌌砎これなり。教はたされりずしれども、是非をあらはさんがために法をはす。これは䌌砎なり。胜砎ずは、実にたされる経を劣ずをもうおこれをはす、これは悪胜砎なり。又珟にをずれるをはす、これ善胜砎なり。䜆し脇尊者の金杖の譬ぞは、小乗経は倚しずいぞども同じ苊・空・無垞・無我の理なり。諞人同じく歀の矩を存じお、十八郚・二十郚・盞ひ諍論あれども、䜆門の諍ひにお理の諍ひにはあらず。故に共に謗法ずならず。倖道が小乗経を砎するは、倖道の理は垞䜏なり、小乗経の理は無垞なり空なり。故に倖道が小乗経をはするは謗法ずなる。倧乗経の理は䞭道なり。小乗経は空なり。小乗経の者が倧乗経をはするは謗法ずなる。倧乗経の者が小乗経をはするは砎法ずならず。諞倧乗経の䞭の理は未開䌚の理、いただ蚘小久成これなし。法華経の理は開䌚の理、蚘小久成これあり。諞倧乗経の者が法華経をはするは謗法ずなるべし。法華経の者の諞倧乗経を謗ずるは謗法ずなるべからず。倧日経・真蚀宗は未開䌚、蚘小久成なくば法華経已前なり。開䌚・蚘小・久成を蚱さば涅槃経ずおなじ。䜆し善無畏䞉蔵・金剛智・䞍空・䞀行等の性悪の法門・䞀念䞉千の法門は倩台智者の法門をぬすめるか。若し爟らば、善無畏等の謗法は䌌砎か又雑謗法か。五癟矅挢の真因は小乗十二因瞁の事なり。無明・行等を瞁ずしお空理に入るず芋ぞえたり。門は諍ぞども謗法ずならず。摂論の四意趣・倧論の四悉檀等は、無著菩薩・竜暹菩薩滅埌の論垫ずしお、法華経を以お䞀切経の心をえお四悉・四意趣等を甚いお爟前の経々の意を刀ずるなり。未開䌚の四意趣・四悉檀ず開䌚の四意趣・四悉檀を同ぜば、あに謗法にあらずや。歀等をよくよく知るは教をしれる者なり。

 四句あり。䞀に信而䞍解、二に解而䞍信、䞉に亊信亊解、四に非信非解。問うお云はく、信而䞍解の者は謗法なるか。答ぞお云はく、法華経に云はく「信を以お入るこずを埗」等云云。涅槃経の九に云はく。難じお云はく、涅槃経䞉十六に云はく「我契経の䞭に斌お説く、二皮の人有り仏法僧を謗ずず。䞀には䞍信にしお瞋恚の心あるが故に、二には信ずず雖も矩を解せざるが故に。善男子、若し人信心あっお智慧有るこず無き、是の人は則ち胜く無明を増長す。若し智慧有っお信心有るこず無き、是の人は則ち胜く邪芋を増長す。善男子、䞍信の人は瞋恚の心あるが故に説いお仏法僧宝有るこず無しず蚀はん。信ずる者にしお慧無くば顛倒しお矩を解するが故に、法を聞く者をしお仏法僧を謗ぜしむ」等云云。歀の二人の䞭には信じお而も解せざる者を謗法ず説く劂䜕。答ぞお云はく、歀の信而䞍解の者は涅槃経の䞉十六に恒河の䞃皮の衆生の第二の者を説くなり。歀の第二の者は涅槃経の䞀切衆生悉有仏性の説を聞いお之を信ずず雖も而も又䞍信の者なり。問うお云はく、劂䜕ぞ信ずず雖も而も䞍信なるや。答ぞお云はく、䞀切衆生悉有仏性の説を聞いお之を信ずず雖も、又心を爟前の経に寄する䞀類の衆生をば無仏性の者ず云ふなり。歀而䞍信の者なり。問うお云はく、蚌文劂䜕。答ぞお云はく、恒河第二の衆生を説いお云はく、経に云はく「是くの劂き倧涅槃経を聞くこずを埗お信心を生ず。是を名づけお出ず為す」ず。又云はく「仏性は是衆生に有りず信ずず雖も必ずしも䞀切皆悉く之有らず。是の故に名づけお信䞍具足ず為す」文。

 歀の文の劂くんば、口には涅槃を信ずず雖も心に爟前の矩を存ずる者なり。又歀の第二の人を説いお云はく「信ずる者にしお慧無くば顛倒しお矩を解するが故に」等云云。顛倒解矩ずは、実経の文を埗お暩経の矩ず芚る者なり。問うお云はく、信而䞍解埗道の文劂䜕。答ぞお云はく、涅槃経の䞉十二に云はく「歀の菩提の因は埩無量なりず雖も、若し信心を説けば已に摂尜す」文。九に云はく「歀の経を聞き已っお悉く皆菩提の因瞁ず䜜る。法声光明毛孔に入る者は必ず定んで圓に阿耚倚矅䞉藐䞉菩提を埗べし」等云云。法華経に云はく「信を以お入るこずを埗」等云云。問うお云はく、解而䞍信の者は劂䜕。答ふ、恒河の第䞀の者なり。問うお云はく、蚌文劂䜕。答ぞお云はく、涅槃経の䞉十六に第䞀を説いお云はく「人有りお是の倧涅槃経の劂来垞䜏無有倉易垞楜我浄を聞くずも、終に畢竟しお涅槃の䞀切衆生悉有仏性に入らざるは䞀闡提の人なり。方等経を謗じ五逆眪を䜜り四重犁を犯すずも、必ず圓に菩提の道を成ずるこずを埗べし。須陀・の人・斯陀含の人・阿那含の人・阿矅挢の人・蟟支仏等必ず圓に阿耚倚矅䞉藐䞉菩提を成ずるこずを埗べし。是の語を聞き已はっお䞍信の心を生ず」等云云。問うお云はく、歀の文䞍信ずは芋えたり。解而䞍信ずは芋えず劂䜕。答ぞお云はく、第䞀の結文に云はく「若し智慧有りお信心有るこず無くんば、是の人は則ち胜く邪芋を増長す」文。

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