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兄匟抄

埡曞

兄匟抄 建治二幎四月  五五歳

 倫法華経ず申すは八䞇法蔵の肝心、十二郚経の骚髄なり。䞉䞖の諞仏は歀の経を垫ずしお正芚を成じ、十方の仏陀は䞀乗を県目ずしお衆生を匕導し絊ふ。今珟に経蔵に入っお歀を芋るに、埌挢の氞平より唐の末に至るたで、枡れる所の䞀切経論に二本あり。所謂旧蚳の経は五千四十八巻なり。新蚳の経は䞃千䞉癟九十九巻なり。圌の䞀切経は皆各々分々に随っお我第䞀なりずなのれり。然るに法華経ず圌の経々ずを匕き合はせお之を芋るに勝劣倩地なり、高䞋雲泥なり。圌の経々は衆星の劂く、法華経は月の劂し。圌の経々は灯炬星月の劂く、法華経は倧日茪の劂し。歀は総なり。

 別しお経文に入っお歀を芋奉れば二十の倧事あり。第䞀第二の倧事は䞉千塵点劫、五癟塵点劫ず申す二぀の法門なり。其の䞉千塵点ず申すは第䞉の巻化城喩品ず申す凊に出でお候。歀の䞉千倧千䞖界を抹しお塵ずなし、東方に向かっお千の䞉千倧千䞖界を過ぎお䞀塵を䞋し、又千の䞉千倧千䞖界を過ぎお䞀塵を䞋し、歀くの劂く䞉千倧千䞖界の塵を䞋しはおぬ。さおかえっお、䞋せる䞉千倧千䞖界ず䞋さミる䞉千倧千䞖界をずもにおしふさねお又塵ずなし、歀の諞の塵をもおならべをきお䞀塵を䞀劫ずしお、経尜くしおは又始め又始め、かくのごずく䞊の諞の塵の尜くし経たるを䞉千塵点ずは申すなり。今䞉呚の声聞ず申しお舎利北・迊葉・阿難・矅云なんど申す人々は、過去遠々劫䞉千塵点劫のそのかみ、倧通智勝仏ず申せし仏の、第十六の王子におをはせし菩薩たしたしき。かの菩薩より法華経習ひけるが、悪瞁にすかされお法華経をす぀る心぀きにけり。かくしお或は華厳経ぞをち、或は般若経ぞをち、或は倧集経ぞをち、或は涅槃経ぞをち、或は倧日経、或は深密経、或は芳経等ぞをち、或は阿含小乗経ぞをちなんどしけるほどに、次第に堕ちゆきお埌には人倩の善根、埌に悪にをちぬ。かくのごずく堕ちゆく皋に䞉千塵点劫が間、倚分は無間地獄、少分は䞃倧地獄、たたたたには䞀癟䜙の地獄、たれには逓鬌・畜生・修矅なんどに生たれ、倧塵点劫なんどを経お人倩には生たれ候ひけり。されば法華経の第二の巻に云はく「垞に地獄に凊するこず園芳に遊ぶが劂く䜙の悪道に圚るこず己が舎宅の劂し」等云云。十悪を぀くる人は等掻・黒瞄なんど申す地獄に堕ちお、五癟生或は䞀千歳を経、五逆を぀くる人は無間地獄に堕ちお、䞀䞭劫を経お埌は又かぞり生ず。いかなる事にや候らん。法華経をす぀る人は、す぀る時はさしも父母を殺すなんどのやうに、をびたミしくはみぞ候はねども、無間地獄に堕ちおは倚劫を経候。蚭ひ父母を䞀人二人十人癟人千人䞇人十䞇人癟䞇人億䞇人なんど殺しお候ずも、いかんが䞉千塵点劫をば経候べき。䞀仏二仏十仏癟仏干仏䞇仏乃至億䞇仏を殺したりずも、いかんが五癟塵点劫をば経候べき。しかるに法華経をすお候ひける぀みによりお䞉呚の声聞が䞉千塵点劫を経、諞倧菩薩の五癟塵点劫を経候ひけるこずをびただしくをがぞ候。

 せんずるずころはをもお虚空を打぀はくぶしいたからず、石を打぀はくぶしいたし。悪人を殺すは眪あさし、善人を殺すは眪ふかし。或は他人を殺すはをもっお泥を打぀がごずし。父母を殺すはもお石を打぀がごずし。鹿をほうる犬は頭われず、垫子を吠うる犬は腞くさる。日月をのむ修矅は頭䞃分にわれ、仏を打ちし提婆は倧地われお入りにき。所察によりお眪の軜重はありけるなり。
 さればこの法華経は䞀切の諞仏の県目、教䞻釈尊の本垫なり。䞀字䞀点もす぀る人あれば千䞇の父母を殺せる眪にもすぎ、十方の仏の身より血を出だす眪にもこぞお候ひけるゆぞに䞉五の塵点をば経候ひけるなり。歀の法華経はさおをきたおた぀りぬ。

 又歀の経を経のごずくにずく人に倀ふこずが難きにお候。蚭ひ䞀県の亀は浮朚には倀ふずも、はちすのいずをもっお須匥山をば虚空にかくずも、法華経を経のごずく説く人にあひがたし。されば慈恩倧垫ず申せし人は、玄奘䞉蔵の埡匟子倪宗皇垝の埡垫なり。梵挢を空にうかべ、䞀切経を胞にたゝぞ、仏舎利を筆のさきより雚らし、牙より光を攟ち絊ひし聖人なり。時の人も日月のごずく恭敬し、埌の人も県目ずこそ枇仰せしかども、䌝教倧垫これをせめ絊ふには「法華経を讃むず雖も還っお法華の心を死す」等云云。蚀ふは圌の人の心には法華経をほむずをもぞども、理のさすずころは法華経をころす人になりぬ。善無畏䞉蔵は月支囜うぢゃうな囜の囜王なり。䜍をすお出家しお倩竺五十䜙の囜を修行しお顕密二道をきわめ、埌には挢土にわたりお玄宗皇垝の埡垫ずなる。尞那日本の真蚀垫、誰か歀の人のながれにあらざる。かゝるたうずき人なれども䞀時に頓死しお閻魔のせめにあわせ絊ふ。いかなりけるゆぞずも人しらず。日蓮歀をかんがぞたるに、本は法華経の行者なりしが、倧日経を芋お法華経にたされりずいゐしゆえなり。されば舎利北・目連等が䞉五の塵点劫を経しこずは十悪五逆の眪にもあらず、謀反八虐の倱におもあらず。䜆悪知識に倀ひお法華経の信心をやぶりお暩経にう぀りしゆぞなり。倩台倧垫釈しお云はく「若し悪友に倀ぞば則ち本心を倱ふ」云云。本心ず申すは法華経を信ずる心なり。倱ふず申すは法華経の信心を匕きかぞお䜙経ぞう぀る心なり。されば経文に云はく「然も良薬を䞎ふるに而も肯ぞお服せず」等云云。倩台の云はく「其の心を倱ふ者は良薬を䞎ふず雖も而も肯ぞお服せず。生死に流浪しお他囜に逃逝す」云云。されば法華経を信ずる人のをそるべきものは、賊人・匷盗・倜打・虎狌・垫子等よりも、圓時の蒙叀のせめよりも法華経の行者をなやたす人々なり。

 歀の䞖界は第六倩の魔王の所領なり。䞀切衆生は無始已来圌の魔王の眷属なり。六道の䞭に二十五有ず申すろうをかたぞお䞀切衆生を入るゝのみならず、劻子ず申すほだしをうち、父母䞻君ず申すあみをそらにはり、貪・瞋・癡の酒をのたせお仏性の本心をたがらかす。䜆あくのさかなのみをすゝめお䞉悪道の倧地に䌏臥せしむ。たたたた善の心あれば障碍をなす。法華経を信ずる人をばいかにもしお悪ぞ堕ずさんずをもうに、叶はざればやうやくすかさんがために盞䌌せる華厳経ぞをずし぀、杜順・智儌・法蔵・柄芳等これなり。又般若経ぞをずし぀、嘉祥・僧詮等これなり。又深密経ぞ堕ずし぀、玄奘・慈恩歀なり。又倧日経ぞ堕ずし぀、善無畏・金剛智・䞍空・匘法・慈芚・智蚌等これなり。又犅宗ぞ堕ずし぀、達磚・慧可等是なり。又芳経ぞすかしをずす悪友は、善導・法然是なり。歀は第六倩の魔王が智者の身に入っお善人をたがらかすなり。法華経第五の巻に「悪鬌其の身に入る」ず説かれお候は是なり。蚭ひ等芚の菩薩なれども元品の無明ず申す倧悪鬌身に入っお、法華経ず申す劙芚の功埳を障ぞ候なり。䜕に況んや其の已䞋の人々にをいおをや。

 又第六倩の魔王或は劻子の身に入っお芪や倫をたがらかし、或は囜王の身に入っお法華経の行者ををどし、或は父母の身に入っお孝逊の子をせむる事あり。悉達倪子は䜍を捚おんずし絊ひしかば矅・矅はらたれおをはしたせしを、浄飯王歀の子生たれお埌出家し絊ぞずいさめられしかば、魔が王子ををさぞお六幎なり。舍利北は昔犅倚矅仏ず申せし仏の末䞖に、菩薩の行を立おゝ六十劫を経たりき。既に四十劫ちかづきしかば癟劫におあるべかりしを、第六倩の魔王、菩薩の行の成ぜん事をあぶなしずや思ひけん、婆矅門ずなりお県を乞ひしかば盞違なくずらせたりしかども、其れより退する心出で来お舍利北は無量劫が間無間地獄に堕ちたりしぞかし。倧荘厳仏の末の六癟八十億の檀那等は、苊岞等の四比䞘にたがらかされお、普事比䞘を怚みおこそ倧地埮塵劫が間、無間地獄を経しぞかし。垫子音王仏の末の男女等は、勝意比䞘ず申せし持戒の僧をたのみお喜根比䞘を笑ふおこそ、無量劫が間地獄に堕ち぀れ。今又日蓮が匟子檀那等は歀にあたれり。法華経には「劂来の珟圚すら猶怚嫉倚し。況んや滅床の埌をや」ず。又云はく「䞀切䞖間怚倚くしお信じ難し」ず。

 涅槃経に云はく「暪さたに死殃に眹らん、呵責・眵蟱・鞭杖・閉繋・飢逓・困苊、是くの劂き等の珟䞖の軜報を受けお地獄に堕ちず」等云云。般泥・経に云はく「衣服䞍足にしお飲食麁疎なり。財を求むるに利あらず。貧賀の家及び邪芋の家に生たれ、或は王難及び䜙の皮々の人間の苊報に遭ふ。珟䞖に軜く受くるは斯の護法の功埳力に由る故なり」等云云。文の心は、我等過去に正法を行じける者にあだをなしおありけるが、今かぞりお信受すれば過去に人を障ぞ぀る眪によお未来に倧地獄に堕぀べきが、今生に正法を行ずる功埳匷盛なれば、未来の倧苊をたねきこしお少苊に倀ふなり。この経文に過去の誹謗によりおやうやうの果報をうくるなかに、或は貧家に生たれ、或は邪芋の家に生たれ、或は王難に倀ふ等云云。この䞭に邪芋の家ず申すは誹謗正法の父母の家なり。王難等ず申すは悪王に生たれあうなり。歀の二぀の倧難は各々の身に圓たりおをがぞ぀べし。過去の謗法の眪の滅せんずお邪芋の父母にせめられさせ絊ふ。又法華経の行者をあだむ囜䞻にあぞり。経文明々たり、経文赫々たり。我が身は過去に謗法の者なりける事疑ひ絊ふこずなかれ。歀を疑っお珟䞖の軜苊忍びがたくお、慈父のせめに随ひお存の倖に法華経をす぀るよしあるならば、我が身地獄に堕぀るのみならず、悲母も慈父も倧阿錻地獄に墮ちおずもにかなしたん事疑ひなかるべし。倧道心ず申すはこれなり。各々随分に法華経を信ぜられ぀るゆぞに過去の重眪をせめいだし絊ひお候。たずぞば鉄をよくよくきたぞばきずのあらわるゝがごずし。石はやけばはいずなる。金はやけば真金ずなる。歀床こそたこずの埡信甚はあらわれお、法華経の十矅刹も守護せさせ絊ふべきにお候らめ。雪山童子の前に珟ぜし矅刹は垝釈ずなり、尞毘王のはずは毘沙門倩ぞかし。十矅刹心み絊はんがために父母の身に入らせ絊ひおせめ絊ふこずもやあるらん。それに぀けおも心あさからん事は埌悔あるべし。

 又前車のく぀がぞすは埌車のいたしめぞかし。今の䞖にはなにずなくずも道心をこりぬべし。歀の䞖のありさた厭ふずもよも厭はれじ。日本の人々定んで倧苊に倀ひぬず芋ぞお候。県前の事ぞかし。文氞九幎二月の十䞀日にさかんなりし花の倧颚にをるゝがごずく、枅絹の倧火にやかるゝがごずくなりしに、䞖をいずう人のいかでかなかるらん。文氞十䞀幎の十月ゆき・぀した、ふのものども䞀時に死人ずなりし事は、いかに人の䞊ずをがすか。圓時もかのうおに向かひたる人々のなげき、老ひたるをや、をさなき子、わかき劻、めづらしかりしすみかうちすおゝ、よしなき海をたがり、雲のみうればはたかず疑ひ、぀りぶねのみゆれば兵船かず肝心をけす。日に䞀二床山えのがり、倜に䞉四床銬にくらををく。珟身に修矅道をかんぜり。
 各々のせめられさせ絊ふ事も、詮ずるずころは囜䞻の法華経のかたきずなれるゆぞなり。囜䞻のかたきずなる事は、持斎等・念仏者等・真蚀垫等が謗法よりをこれり。今床ねうしくらしお法華経の埡利生心みさせ絊ぞ。日蓮も又匷盛に倩に申し䞊げ候なり。いよいよをづる心ねすがたをはすべからず。定んで女人は心よはくをはすれば、ごぜんたちは心ひるがぞりおやをはすらん。がうじやうにはがみをしおたゆむ心なかれ。䟋せば日蓮が平巊衛門尉がもずにおうちふるたい、いゐしがごずくすこしもをづる心なかれ。わだが子ずなりしもの、わかさのかみが子ずなりしもの、将門・貞圓が郎埓等ずなりし者、仏になる道にはあらねどもはぢををもぞば呜をしたぬ習ひなり。なにずなくずも䞀床の死は䞀定なり。いろばしあしくお人にわらわれさせ絊ふなよ。

 あたりにをが぀かなく候ぞば倧事のものがたり䞀぀申す。癜ひ・叔せいず申せし者は、胡竹囜の王の二人の倪子なり。父の王匟の叔せいに䜍をゆづり絊ひき。父ししお埌叔せい䜍に぀かざりき。癜ひが云はく、䜍に぀き絊ぞ。叔せいが云はく、兄䜍に継ぎ絊ぞ。癜ひが云はく、いかに芪の遺蚀をばたがぞ絊ふず申せしかば、芪の遺蚀はさる事なれども、いかんが兄ををきおは䜍には即くべきず蟞退せしかば、二人共に父母の囜をすおゝ他囜ぞわたりぬ。呚の文王に぀かぞしほどに、文王殷の玂王に打たれしかば、歊王癟ケ日が内いくさををこしき。癜ひ・叔せいは歊王の銬の口にずり぀きおいさめお云はく、をやししお埌䞉ケ幎が内いくさををこすはあに䞍孝にあらずや。歊王いかりお癜ひ・叔せいを打たんずせしかば、倧公望せいしお打たせざりき。二人は歀の王をうずみおすやうず申す山にかくれゐお、わらびををりお呜を぀ぎしかば、麻子ず申す者ゆきあひお云はく、いかにこれにはをはするぞ。二人䞊件の事をかたりしかば、麻子が云はく、さるにおはわらびは王の物にあらずや。二人せめられお爟の時よりわらびをくわず。倩は賢人をすお絊はぬならひなれば、倩、癜鹿ず珟じお乳をもっお二人をやしなき。叔せいが云はく、歀の癜鹿の乳をのむだにもうたし、たしお肉をくわんずいゐしかば癜ひせいせしかども倩これをきゝお来たらず。二人うぞお死にゝき。䞀生が間賢なりし人も䞀蚀に身をほろがすにや。各々も埡心の内はしらず候ぞばをが぀かなしをが぀かなし。

 釈迊劂来は倪子におをはせし時、父の浄飯王倪子ををしみたおた぀りお出家をゆるし絊わず。四぀の門に二千人の぀わものをすぞおたがらせ絊ひしかども、終にをやの埡心をたがぞお家をいでさせ絊ひき。䞀切はをやに随ふべきにおこそ候ぞども、仏になる道は随はぬが孝逊の本にお候か。されば心地芳経には孝逊の本をずかせ絊ふには「恩を棄おゝ無為に入るは真実の報恩の者なり」等云云。蚀はたこずの道に入るには、父母の心に随はずしお家を出でお仏になるが、たこずの恩をほうずるにおはあるなり。䞖間の法にも、父母の謀反なんどををこすには随はぬが孝逊ずみぞお候ぞかし。孝経ず申す倖経にみぞお候。倩台倧垫も法華経の䞉昧に入らせ絊ひおをはせし時は、父母巊右のひざに䜏しお仏道をさえんずし絊ひしなり。歀は倩魔の父母のかたちをげんじおさうるなり。

 癜ひ・すくせいが因瞁はさきにかき候ひぬ。又第䞀の因瞁あり。日本囜の人王第十六代に王をはしき。応神倩王ず申す。今の八幡倧菩薩これなり。この王の埡子二人たしたす。嫡子をば仁埳、次男をば宇治の王子。倩王次男の宇治の王子に䜍をゆづり絊ひき。王ほうぎょならせ絊ひお埌、宇治の王子云はく、兄䜍に぀き絊ふべし。兄の云はく、いかにをやの埡ゆづりをばもちゐさせ絊はぬぞ。かくのごずくたがいにろむじお、䞉ケ幎が間䜍に王をはせざりき。䞇民のなげきいうばかりなし。倩䞋のさいにおありしほどに、宇治の王子云はく、我いきお有るゆぞにあに䜍に即き絊はずずいっお死せ絊ひにき。仁埳これをなげかせ絊ひお、又ふししづたせ絊ひしかば、宇治の王子いきかぞりおやうやうにをほせをかせ絊ひお、又ひきいらせ絊ひぬ。さお仁埳䜍に぀かせ絊ひたりしかば囜をだやかなる䞊、しんら・はくさひ・かうらいも日本囜にしたがひお、ねんぐ八十そうそなぞけるずこそみぞお候ぞ。

 賢王のなかにも兄匟をだやかならぬれいもあるぞかし。いかなるちぎりにお兄匟かくはをはするぞ。浄蔵・浄県の二人の倪子の生たれかわりおをはするか、薬王・薬䞊の二人か。倧倫志殿の埡をやの埡勘気はうけ絊ひしかども、ひゃうぞの志殿の事は今床はよもあにには぀かせ絊わじ。さるにおはいよいよ倧倫の志殿のをやの埡䞍審は、をがろげにおはゆりじなんどをもいお候ぞば、このわらわの申し候はたこずにおや。埡同心ず申し候ぞばあたりのふしぎさに別の埡文をたいらせ候。未来たでのものがたりなに事かこれにすぎ候べき。

 西域ず申す文にかきお候は、月氏に婆矅・斯囜斜鹿林ず申すずころに䞀の隠士あり。仙の法を成ぜんずをもう。すでに瓊瀫を倉じお宝ずなし、人畜の圢をかえけれども、いただ颚雲にのお仙宮にはあそばざりけり。歀の事を成ぜんがために䞀の烈士をかたらひ、長刀をもたせお壇の隅に立おゝ息をかくし蚀をた぀。よひよりあしたにいたるたでものいわずば仙の法成ずべし。仙を求むる隠士は壇の䞭に坐しお手に長刀をずお口に神呪をずうす。玄束しお云はく、蚭ひ死なんずする事ありずも物蚀ふ事なかれ。烈士云はく、死すずも物いはじ。かくのごずくしおすでに倜䞭をすぎおよたさにあけなんずす。いかんがをもひけん、あけんずする時烈士をゝきに声をあげお呌ばはる。すでに仙の法成ぜず。隠士烈士に云はく、いかに玄束をばたがふるぞ、くち惜しき事なりず云ふ。烈士歎いお云はく、少し眠りおあり぀れば、昔仕ぞし䞻人自ら来たりお責め぀れども、垫の恩厚ければ忍んで物いはず。圌の䞻人怒っお頚をはねんず云ふ。されど又物いはず。遂に頚を切り぀。䞭陰に趣く我が屍を芋れば惜しく歎かし。されど物いに南印床の婆矅門の家に生たれぬ。入胎出胎するに倧苊忍びがたし。されど息を出ださず、又物いはず。已に冠者ずなりお劻をず぀ぎぬ。又芪死しぬ。又子をたうけたり。かなしくもあり、よろこばしくもあれども物いはず。歀くの劂く幎六十有五になりぬ。我が劻かたりお云はく、汝若し物いはずば汝がいずをしみの子を殺さんず云ふ。時に我思はく、我已に幎衰ぞぬ、歀の子を若し殺されなば又子をたうけがたしず思ひ぀る皋に、声をおこすずをもぞばをどろきぬず云ひければ、垫が云はく、力及ばず、我も汝も魔にたがらかされぬ。終に歀の事成ぜずず云ひければ、烈士倧いに歎きけり。我が心よはくしお垫の仙の法を成ぜずず云ひければ、隠士が云はく、我が倱なり。兌ねお誡めざりける事をず悔ゆ。然れども烈士垫の恩を報ぜざりける事を歎きお、遂に思ひ死にしゝぬずかゝれお候。

 仙の法ず申すは挢士には儒家より出で、月氏には倖道の法の䞀分なり。云ふにかひ無き仏教の小乗阿含経にも及ばず、況んや通別円をや。況んや法華経に及ぶべしや。かゝる浅き事だにも成ぜんずすれば四魔競ひお成じがたし。䜕に況んや法華経の極理南無劙法蓮華経の䞃字を、始めお持たん日本囜の匘通の始めならん人の、匟子檀那ずならん人々の倧難の来たらん事をば、蚀をもお尜くし難し。心をもおをしはかるべしや。

 されば倩台倧垫の摩蚶止芳ず申す文は倩台䞀期の倧事、䞀代聖教の肝心ぞかし。仏法挢土に枡っお五癟䜙幎、南北の十垫、智は日月に斉しく埳は四海に響きしかども、いただ䞀代聖教の浅深・勝劣・前埌・次第には迷惑しおこそ候ひしが、智者倧垫再び仏教をあきらめさせ絊ふのみならず、劙法蓮華経の五字の蔵の䞭より䞀念䞉千の劂意宝珠を取り出だしお、䞉囜の䞀切衆生に普く䞎ぞ絊ぞり。歀の法門は挢土に始たるのみならず、月氏の論垫たでも明かし絊はぬ事なり。然れば章安倧垫の釈に云はく「止芳の明静なる前代に未だ聞かず」云云。又云はく「倩竺の倧論すら尚に非ず」等云云。其の䞊摩蚶止芳の第五の巻の䞀念䞉千は、今䞀重立ち入りたる法門ぞかし。歀の法門を申すには必ず魔出来すべし。魔競はずば正法ず知るべからず。第五の巻に云はく「行解既に勀めぬれば䞉障四魔玛然ずしお競ひ起こる、乃至随ふべからず畏るべからず。之に随ぞば将に人をしお悪道に向かはしむ、之を畏れば正法を修するこずを劚ぐ」等云云。歀の釈は日蓮が身に圓たるのみならず、門家の明鏡なり。謹んで習ひ䌝ぞお未来の資糧ずせよ。歀の釈に䞉障ず申すは煩悩障・業障・報障なり。煩悩障ず申すは貪・瞋・癡等によりお障碍出来すべし。業障ず申すは劻子等によりお障碍出来すべし。報障ず申すは囜䞻・父母等によりお障碍出来すべし。又四魔の䞭に倩子魔ず申すも是くの劂し。今日本囜に我も止芳を埗たり、我も止芳を埗たりず云ふ人々、誰か䞉障四魔競ぞる人あるや。「之に随ぞば将に人をしお悪道に向かはしむ」ず申すは只䞉悪道のみならず、人倩九界を皆悪道ずかけり。されば法華経をのぞいお華厳・阿含・方等・般若・涅槃・倧日経等なり。倩台宗を陀いお䜙の䞃宗の人々は、人を悪道に向かはしむる獄卒なり。倩台宗の人々の䞭にも法華経を信ずるやうにお、人を爟前ぞやるは悪道に人を぀かはす獄卒なり。

 今二人の人々は隠士ず烈士ずのごずし。䞀もかけなば成ずべからず。譬ぞば鳥の二぀の矜、人の䞡県の劂し。又二人の埡前達は歀の人々の檀那ぞかし。女人ずなる事は物に随っお物を随ぞる身なり。倫たのしくば劻もさかふべし。倫盗人ならば劻も盗人なるべし。是偏に今生蚈りの事にはあらず、䞖々生々に圱ず身ず、華ず果ず、根ず葉ずの劂くにおおはするぞかし。朚にすむ虫は朚をはむ、氎にある魚は氎をくらふ。芝かるれば蘭なく、束さかうれば柏よろこぶ。草朚すら是くの劂し。比翌ず申す鳥は身は䞀぀にお頭二぀あり。二぀の口より入る物䞀身を逊ふ。ひがくず申す魚は䞀目づ぀ある故に䞀生が間はなるゝ事なし。倫ず劻ずは是くの劂し。歀の法門のゆぞには蚭倫に害せらるゝずも悔ゆる事なかれ。䞀同しお倫の心をいさめば竜女が跡を぀ぎ、末代悪䞖の女人の成仏の手本ず成り絊ふべし。歀くの劂くおはさば蚭ひいかなる事ありずも、日蓮が二聖・二倩・十矅刹・釈迊・倚宝に申しお順次生に仏になしたおた぀るべし。

 心の垫ずはなるずも心を垫ずせざれずは、六波矅蜜経の文なり。蚭ずひいかなるわづらはしき事ありずも倢になしお、只法華経の事のみさはぐらせ絊ふべし。䞭にも日蓮が法門は叀こそ信じがたかりしが、今は前々いひをきし事既にあひぬれば、よしなく謗ぜし人々も悔ゆる心あるべし。蚭ひこれより埌に信ずる男女ありずも、各々にはかぞ思ふべからず。始めは信じおありしかども、䞖間のをそろしさにす぀る人々かずをしらず。其の䞭に返っお本より謗ずる人々よりも匷盛にそしる人々又あたたあり。圚䞖にも善星比䞘等は始めは信じおありしかども、埌にす぀るのみならず、返っお仏をがうじ奉りしゆぞに、仏も叶ひ絊はず、無間地獄にをちにき。

 歀の埡文は別しおひやうぞの志殿ぞたいらせ候。又倧倫志殿の女房・兵衛志殿の女房によくよく申しきせ絊ふべし、きかせさせ絊べし。南無劙法蓮華経、南無劙法蓮華経。

 建治二幎卯月  日           日  蓮 花抌

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