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兵衛志殿女房御書

御書5
兵衛志殿女房御書  建治三年三月二日 五六歳  
 先度仏器まいらせさせ給ひ候ひしが、此の度此の尼御前大事の御馬にのせさせ給ひて候由承り候。    法にすぎて候御志かな。これは殿はさる事にて、女房のはからひか。昔儒童菩薩と申せし菩薩は、五茎の蓮華を五百の金銭を以てかひとり、定光菩薩を七日七夜供養し給ひき。女人あり、瞿夷となづく。二茎の蓮華を以て自ら供養して云はく、凡夫にてあらん時は世々生々夫婦とならん、仏にならん時は同時に仏になるべし。此のちかひくちずして、九十一劫の間夫婦となる。結句、儒童菩薩は今の釈迦仏、昔の瞿夷は今の耶輸多羅女、今法華経の勧持品にして具足千万光相如来是なり。悉達太子檀特山に入り給ひしには、金泥駒・帝釈の化身・摩騰迦・竺法蘭の経を漢土に渡せしには十羅刹化して白馬となり給ふ。此の馬も、法華経の道なれば、百二十年御さかへの後、霊山浄土へ乗り給ふべき御馬なり。恐々謹言。  三月二日               日 蓮 花押 兵衛志殿女房