当体義抄送状
文永十年 五二歳
問ふ、当体蓮華解し難し。故に譬喩を仮りて之を顕はすとは、経文に証拠 有るか。答ふ、経に云はく「世間の法に染まざること、蓮華の水に在るが如 し、地より涌出す」云云。地涌の菩薩の当体蓮華なり。譬喩は知んぬべし。 以上後日に之を改め書すべし。此の法門は妙経所詮の理にして釈迦如来の 御本懐、地涌の大士に付嘱せる末法に弘通せん経の肝心なり。国主信心あら んの後始めて之を申すべき秘蔵の法門なり。日蓮より最蓮房に伝へ畢んぬ。 日 蓮 花押