教学用語
三類さんるいの強敵ごうてき
三類の強敵とは、釈尊の滅後、法華経の行者に対して様々な形で迫害する三種類の邪人をいいます。
法華経勧持品第十三には、八十万億那由佗の菩薩が、仏滅後の法華経の弘通を誓って二十行の偈文が述べられています。この二十行の偈文の中に、仏滅後の悪世に三類の強敵が出現して様々な迫害を加えられるけれども、必ず法華経を弘通していくとの決意が記されているのです。
三類とは、勧持品二十行の偈文の内容から、妙楽大師が『法華文句記』の中で名付けたもので、第一に俗衆増上慢、第二に道門増上慢、第三に僣聖増上慢をいいます。増上慢とは、最勝の法を未だ証得していないにもかかわらず、証得したと自惚うぬぼれ、他の人よりも勝れていると高ぶる者をいいます。
第一の俗衆増上慢とは、法華経の行者に対して悪口罵詈し、刀や杖をもって迫害する仏法に無知な在家の人々をいいます。
第二の道門増上慢とは、自己の慢心のために法華経の行者を悪にくみ、危害を加える諸宗の僧侶をいいます。
第三の僣聖増上慢とは、世の人々から聖者のように尊敬されるものの、その心は常に世俗のことを思って利欲に執着している邪僧をいいます。この邪僧が、国王等をそそのかして法華経の行者に難を加えさせるのです。
妙楽は、この三類の強敵を忍ぶ難易について、『法華文句記』の中で、
「初め(俗衆)は忍ぶべし、次(道門)は前に過ぐ、第三(僣聖)最も甚だし、後々の者は転うたた識しり難きを以ての故なり」
と釈しているように、三類の中でも第三の僣聖増上慢が最も激しい、しかも巧みな手段を用いて迫害します。なぜなら僣聖増上慢の正体は容易に見破ることはできないからです。
迹化の菩薩衆は、このような三類の強敵による数々の難に対し、いかなることがあろうとも法華経を弘通すると釈尊に誓います。ところが釈尊は、迹化の衆にはこの大難は耐えられないとして地涌の菩薩を召し出だし、末法流布の付嘱を託されました。
この地涌の菩薩の上首上行菩薩が、末法濁悪の世に出現した日蓮大聖人なのです。
『開目抄』に、
「法華経の第五の巻、勧持品かんじほんの二十行の偈は、日蓮だにも此の国に生まれずば、ほと殆をど世尊は大妄語の人、八十万億那由佗なゆたの菩薩は提婆だいばが虚こ誑罪おうざいにも堕ちぬべし。(中略)但日蓮一人これをよめり」(御書 541頁)
とあるように、大聖人は妙法弘通のために勧持品の二十行の偈文を悉ことごとく身読され、三類の強敵を悉く退散せしめられて、法華経の一文一句のすべてが正義であることを実証されました。そして、御自身が末法の本仏であることを顕わされ、本門戒壇の大御本尊を建立あそばされたのです。
『椎地四郎殿御書』に、
「大難来たりなば強盛の信心弥々いよいよ悦びをなすべし」(御書 1555頁)
とあるように、地涌の眷属たる私たちは、いかなる困難があっても、強盛の信心をもってそれを打ち破り、自らの境界を切り開いていくべきです。