いくつぞと 問わばひとつと答ふべし 生まれし年の えとに還れば
ふじのねに 常にとなうる堂たてて 雲井にたえぬ 法の声かな
久堅の あまの羽衣 なでやらで 守らせ給え 石の坊(いお)りも
冨士の根に 住むは都に まされるを 世はうしとらと 人はいうなり
死ぬるとは たがいひそめしくれ竹の 世々はふるともいきとまる身を
空を囲みて桶と為す 空は即ち是れ空 桶は即ち是れ仮 吾れ其の中に在り
柴の戸に あけくれ 富士のしら雪を見るは いかなるえにしなるらん
をのづから むねのはちすも開くべし 富士見の庵の 窓のあけぼの
世をのがれ 蓮の山の庵にすむ 身はさながらの ほとけなりけり
末の世に咲くは色香は及ばねど種はむかしに替らざりけり