不如治大悪御書

御書2

不如治大悪御書   文永期

 人肉を食はざる投身無用なり。今其の中を取りて之を勘へるに、法華経の実相は一同に之を存すと雖も、其の行儀は時に随って不定なるべし。故に流通の諸品、品々なり。仏菩薩の意楽随時の故か。設ひ悪に非ずと雖も小善を以て大善を防ぐは五逆罪に過ぐるなり。今の智者万善を勧めしむるよりは一大悪を治するには如かず。例せば外道の九十五種の如し。其の所詮を取るに上楽我浄の四字なり。名は仏法の根本を得たるも其の義は即ち邪なり。仏世に出でて先づ此の悪を治す。正法を説かんが為に苦・無常等の四法を構へて彼の邪見を治す。今の世間は弥陀の名号の権法を以て円機を抑へ、円経に進まざらしむ。名号の権悪を治せんが為には妙法蓮華経の実術を用ふ。在世・滅後異なりと雖も正法を弘むるの心是一なり。時に当たりて秘術を得たるか。