ホヌム » 埡曞 » 埡曞 » 十法界明因果抄 (十界明因果抄)

十法界明因果抄 (十界明因果抄)

埡曞

十法界明因果抄 (十界明因果抄)  
文応元幎四月二䞀日  䞉九歳
                  沙門 日蓮撰

 八十華厳経六十九に云はく「普賢道に入るこずを埗お、十法界を了知す」ず。法華経第六に云はく「地獄声、畜生声、逓鬌声、阿修矅声、比䞘声・比䞘尌声 人道、倩声 倩道、 声聞声、蟟支仏声、菩薩声、仏声」 已䞊十法界の名目なり。

 第䞀に地獄界ずは、芳仏䞉昧経に云はく「五逆眪を造り、因果を撥無し、倧乗を誹謗し、四重犁を犯し、虚しく信斜を食するの者歀の䞭に堕す」 阿錻地獄なり。 正法念経に云はく「殺・盗・淫欲・飲酒・劄語の者歀の䞭に堕す」 倧叫喚地獄なり。 正法念経に云はく「昔酒を以お人に䞎ぞお酔はしめ、已はっお調戯しお之を翫び、圌をしお矞恥せしむるの者歀の䞭に堕す」叫喚地獄なり。 正法念経に云はく「殺生・偞盗・邪淫の者歀の䞭に堕す」

 衆合地獄なり。 涅槃経に云はく「殺に䞉皮有り、謂はく䞋䞭䞊なり○䞋ずは蟻子乃至䞀切の畜生なり、乃至䞋殺の因瞁を以お地獄に堕し、乃至具に䞋の苊を受く」文。

 問うお云はく、十悪五逆等を造りお地獄に堕するは䞖間の道俗皆之を知れり。謗法に䟝っお地獄に堕するは未だ其の盞貌を知らず劂䜕。答ぞお云はく、堅慧菩薩の造・勒那摩堀の蚳の究竟䞀乗宝性論」に云はく「楜っお小法を行じお法及び法垫を謗じ○劂来の教を識らずしお、説くこず修倚矅に乖きお是真実矩ず蚀ふ」文。歀の文の劂くんば、小乗を信じお真実矩ず云ひ、倧乗を知らざるは是謗法なり。倩芪菩薩の説、真諊䞉蔵の蚳の仏性論に云はく「若し倧乗に憎背するは、歀は是䞀闡提の因なり、衆生をしお歀の法を捚おしむるを為おの故に」文。歀の文の劂くんば、倧小流垃の䞖に䞀向に小乗を匘め、自身も倧乗に背き人に斌おも倧乗を捚おしむる、是を謗法ず云ふなり。倩台倧垫の梵網経疏に云はく「謗は是乖背の名なり。を是解ずせば理に称はず、蚀実に圓たらず、異解しお説く者を皆名づけお謗ず為すなり。己が宗に乖くが故に眪を埗」文。法華経の譬喩品に云はく「若し人信ぜずしお歀の経を毀謗せば、則ち䞀切䞖間の仏皮を断ず、乃至其の人呜終しお阿錻獄に入らん」文。歀の文の意は、小乗の䞉賢已前、倧乗の十信已前、末代の凡倫十悪・五逆・䞍孝父母・女人等を嫌はず。歀等は法華経の名字を聞いお、或は題名を唱ぞ、䞀字・䞀句・四句・䞀品・䞀巻・八巻等を受持読誊し、乃至亊䞊の劂く行ぜん人を、随喜し讃歎する人は、法華経より倖、䞀代の聖教を深く習ひ矩理に達し、堅く倧小乗の戒を持おる倧菩薩の劂き者より勝れお、埀生成仏を遂ぐべしず説くを信ぜずしお還っお法華経は地䜏已䞊の菩薩の為、或は䞊根䞊智の凡倫の為にしお、愚人・悪人・女人・末代の凡倫等の為には非ずず蚀はん者は、即ち䞀切衆生の成仏の皮を断じお阿錻獄に入るべしず説ける文なり。涅槃経に云はく「仏の正法に斌お氞く護惜建立の心無し」文。歀の文の意は歀の倧涅槃経の倧法、䞖間に滅尜せんを惜したざる者は、即ち是誹謗の者なり。倩台倧垫法華経の怚敵を定めお云はく「聞くこずを喜ばざる者を怚ず為す」文。謗法は倚皮なり。倧小流垃の囜に生たれお、䞀向に小乗の法を孊しお身を治め倧乗に遷らざるは是謗法なり。亊華厳・方等・般若等の諞倧乗経を習ぞる人も、諞経ず法華経ず等同の思ひを䜜し、人をしお等同の矩を孊ばしめ、法華経に遷らざるは是謗法なり。亊偶円機有る人の法華経を孊ぶをも、我が法に付け、䞖利を貪るが為に、汝が機は法華経に圓らざる由を称しお、歀の経を捚お暩経に遷らしむるは是倧謗法なり。歀くの劂き等は皆地獄の業なり。

 人間に生ずるこず過去の五戒は匷く、䞉悪道の業因は匱きが故に人間に生ずるなり。亊圓䞖の人も五逆を䜜る者は少なく、十悪の盛んに之を犯す。亊偶埌䞖を願ふ人の十悪を犯さずしお善人の劂くなるも、自然に愚痎の倱に䟝っお身口は善く意は悪しき垫を信ず。䜆我のみ歀の邪法を信ずるに非らず。囜を知行する人、人民を聳めお我が邪法に同ぜしめ、劻子眷属所埓の人を以お亊聳め埓ぞ我が行を行ぜしむ。故に正法を行ぜしむる人に斌お結瞁を䜜さず。亊民所埓等に斌おも随喜の心を至さしめず。故に自他共に謗法の者ず成りお、修善止悪の劂き人も自然に阿錻地獄の業を招くこず、末法に斌お倚分之有るか。

 阿難尊者は浄飯王の甥、斛飯王の倪子、堀婆達倚の舎匟、釈迊劂来の埓子なり。劂来に仕ぞ奉りお二十幎、芚意䞉昧を埗お䞀代聖教を芚れり。仏入滅の埌、阿闍䞖王、阿難に垰䟝し奉る。仏滅の埌四十幎の比、阿難尊者䞀の竹林の䞭に至るに䞀の比䞘有り。䞀の法句の偈を誊しお云はく、若し人生じお癟歳なりずも氎の朊涞を芋ずんば生じお䞀日にしお之を睹芋するこずを埗るに劂かず」已䞊。 阿難歀の偈を聞き比䞘に語りお云はく、歀仏説に非ず、汝修行すべからず。爟の時に比䞘阿難に問うお云はく、仏説は劂䜕。阿難答ぞお云はく、若し人生じお癟歳なりずも生滅の法を解せずんば、生じお䞀日にしお之を解了するこずを埗んには劂かず已䞊。 歀の文仏説なり。汝が唱ふる所の偈は歀の文を謬りたるなり。爟の時に比䞘、歀の偈を埗お本垫の比䞘に語る。本垫の云はく、我汝に教ふる所の偈は真の仏説なり。阿難が唱ふる所の偈は仏説に非ず。阿難幎老衰しお蚀錯謬倚し、信ずべからずず。歀の比䞘亊阿難の偈を捚おゝ本の謬りたる偈を唱ふ。阿難又竹林に入りお之を聞くに、我が教ふる所の偈に非ず。重ねお之を語るに比䞘信甚せざりき等云云。仏の滅埌四十幎にさえ既に謬り出来せり。䜕に況んや仏の滅埌既に二千䜙幎を過ぎたり。仏法倩竺より唐土に至り、唐土より日本に至る。論垫・䞉蔵・人垫等䌝来せり、定めお謬り無き法は䞇が䞀なるか。䜕に況んや圓䞖の孊者偏執を先ず為しお我慢を挿み、火を氎ず諍ひ之を糟さず。偶仏の教ぞの劂く教ぞを宣ぶる孊者をも之を信甚せず。故に謗法ならざる者は䞇が䞀なるか。

 第二に逓鬌道ずは、正法念経に云はく「昔財を貪りお屠殺する者歀の報いを受く」ず。亊云はく「䞈倫自ら矎食をひ劻子に䞎ぞず。或は婊人自ら食しお倫子に䞎ぞざるは歀の報いを受く」ず。亊云はく「名利を貪るが為に䞍浄説法する者歀の報いを受く」ず。亊云はく「昔酒をるに氎を加ふる者、歀の報いを受く」ず。亊云はく「若し人劎しお少しく物を埗たるを誑惑しお取り甚ふる者、歀の報いを受く」ず。亊云はく「昔行路の人の病苊ありお疲極せるに、其の売を欺き取り、盎を䞎ふるこず薄少なりし者、歀の報いを受く」ず。亊云はく「昔刑獄を兞䞻、人の飲食を取りし者歀の報いを受く」ず。亊云はく「昔陰凉暹を䌐り、及び衆僧の園林を䌐りし者、歀の報いを受く」文。法華経に云はく「若し人信ぜずしお歀の経を毀謗せば○垞に地獄に凊するこず園芳に遊ぶが劂く䜙の悪道に圚るこず、己が舎宅の劂し」文。慳貪・偞盗等の眪に䟝っお逓鬌道に堕するこずは䞖人知り易し。慳貪等無き諞の善人も謗法に䟝り亊謗法の人に芪近し自然に其の矩を信ずるに䟝っお逓鬌道に堕するこずは、智者に非ざれば之を知らず。胜く胜く恐るべきか。
 第䞉に畜生道ずは、愚痎無慚にしお埒に信斜の他物を受けお之を償はざる者歀の報いを受くるなり。法華経に云はく「若し人信ぜずしお歀の経を毀謗せば○圓に畜生に堕すべし」文。 巳䞊䞉悪道なり。

 第四に修矅道ずは、止芳の䞀に云はく「若し其の心念々に垞に圌に勝らんこずを欲し、耐ぞざれば人を䞋し他を軜しめ己を珍ぶこず鵄の高く飛びお芖䞋ろすが劂し。而も倖には仁・矩・瀌・智・信を揚げお䞋品の善心を起こし阿修矅の道を行ずるなり」文。

 第五に人道ずは、報恩経に云はく「䞉垰五戒は人に生ず」文。
 第六に倩道ずは、二有り。欲倩には十善を持ちお生じ、色・無色倩には䞋地は麁・苊・障、䞊地は静・劙・離の六行芳を以お生ずるなり。

 問うお云はく、六道の生因は是くの劂し。抑同時に五戒を持ちお人界の生を受くるに䜕ぞ生盲・聟・・陋・・背傎・貧窮・倚病・瞋恚等無量の差別有りや。答ぞお云はく、倧論に云はく「若しは衆生の県を砎り、若しは衆生の県を屈り、若しは正芋の県を砎り、眪犏無しず蚀はん。是の人死しお地獄に堕し、眪畢りお人ず為り、生れおより盲なり。若しは埩仏塔の䞭の火珠及び諞の灯明を盗む。是くの劂き等の皮々の先䞖の業因瞁をもお県を倱ふ○聟ずは是先䞖の因瞁、垫父の教蚓を受けず行ぜず、而も反っお瞋恚す。是の眪を以おの故に聟ずなる。埩次に衆生の耳を截り、若しは衆生の耳を砎り、若しは仏塔・僧塔・諞の善人犏田の䞭の・皚・鈎・貝及び錓を盗む。故に歀の眪を埗るなり。先䞖に他の舌を截り、或は其の口を塞ぎ、或は悪薬を䞎ぞお語るこずを埗ざらしめ、或は垫の教ぞ、父母の教勅を聞き其の語を断぀○䞖に生れお人ず為り唖にしお蚀ふこず胜はず○先䞖に他の坐犅を砎り、坐犅の舎を砎り、諞の呪術を以お人を呪しお瞋らし闘諍し婬欲せしむ。今䞖に諞の結䜿厚重なるこず、婆矅門の其の皲田を倱ひ其の婊埩死しお即時に狂発しお裞圢にしお走りしが劂くならん○先䞖に仏・阿矅挢・蟟支仏の食及び父母所芪の食を奪ぞば、仏䞖に倀ふず雖も猶故飢枇す。眪の重きを以おの故なり○先䞖に奜んで鞭杖・拷掠・閉繋を行じ皮々に悩たすが故に今䞖に病を埗るなり○先䞖に他の身を砎り、其の頭を截り、其の手足を斬り、皮々の身分を砎り、或は仏像を壊り、仏像の錻及び諞の賢聖の圢像を毀り、或は父母の圢像を砎る。歀の眪を以おの故に圢を受くるに倚く具足せず。埩次に䞍善法の報い、身を受くるこず醜陋なり」文。

 法華経に云はく「若し人信ぜずしお歀の経を毀謗せば○若し人ず為るこずを埗おは諞根闇鈍にしお盲・聟・背傎ならん○口の気垞に臭く、鬌魅に著せられん。貧窮䞋賀にしお人に䜿はれ、倚病瘠痩にしお䟝怙する所無く○若しは他の叛逆し抄华し竊盗せん。是くの劂き等の眪暪に其の殃に矅らん」文。又八の巻に云はく「若し埩是の経兞を受持する者を芋お其の過悪を出ださん。若しは実にもあれ若しは䞍実にもあれ、歀の人は珟䞖に癜癩の病を埗ん。若し之を軜笑するこず有らん者は圓に䞖々に牙歯疎き欠け・醜き脣平める錻・手脚繚戻し、県目角に、身䜓臭穢・悪瘡・膿血・氎腹・短気諞の悪重病あるべし」文。

 問うお云はく、䜕なる業を修する者が六道に生じお其の䞭の王ず成るや。答ぞお云はく、倧乗の菩薩戒を持しお之を砎る者は色界の梵王・欲界の魔王・垝釈・四茪王・犜獣王・閻魔王等ず成るなり。心地芳経に云はく「諞王の受くる所の諞の犏楜は、䜏昔曜お䞉぀の浄戒を持ち、戒埳薫修しお招き感ずる所にしお、人倩の劙果ずしお王の身を獲たり。○䞭品に菩薩界を受持すれば、犏埳自圚の転茪王ずなり、心の所䜜に随ひお尜く皆成じ、無量の人倩悉く遵奉せん。䞋の䞊品に持すれば倧鬌王ずなり、䞀切の非人咞く率䌏せん。戒品を受持しお欠犯すず雖も、戒の勝るゝに由るが故に王ず為るこずを埗るなり。䞋の䞭品に持すれば犜獣の王ずなり、䞀切の飛走皆垰䌏せん。枅浄の戒に斌お欠犯有るも戒の勝るゝに由るが故に王ず為るこずを埗るなり。䞋の䞋品に持すれば、魔王ずしお地獄の䞭に凊しお垞に自圚なり、犁戒を毀り悪道に生ずず雖も、戒の勝るゝに由るが故に王ず為るこずを埗るなり○若し劂来の戒を受けざるこず有らば、終に野干の身をも埗るこず胜はず。䜕に況んや、胜く人倩の䞭の最勝の快楜を感じお、王䜍に居せんをや」文。安然和尚の広釈に云はく「菩薩の倧戒は持しお法王ず成り、犯しお䞖王ずなる。而も戒の倱せざるこず譬ぞば金銀を噚ず為すに甚ふるに貎く、噚を砎りお甚ひざるも而も宝は倱せざるが劂し」ず。亊云はく「無量寿芳に云はく、劫初より已来八䞇の王有りお其の父を殺害すず。歀則ち菩薩戒を受け囜王ず䜜るず雖も、今殺の戒を犯しお皆地獄に堕すれども、犯戒の力も王ず䜜るなりず。倧仏頂経に云はく、発心の菩薩眪を犯せども、暫く倩神地祇ず䜜るず。倧随求に云はく、倩垝呜尜きお応ち驢の腹に入れども、随求の力に由っお還っお倩䞊に生ずず。尊勝に云はく、善䜏倩子死埌䞃返、応に畜生の身に堕すべきを尊勝の力に由っお還っお倩の報を埗たりず。昔囜王有り千車をもっお氎を運び、仏塔の焌くるを救ふ。自ら・心を起こしお修矅王ず䜜る。昔梁の歊垝五癟の袈裟を須匥山の五癟の矅挢に斜す。誌公埀いお五癟に斜すに䞀を欠く。衆の云はく、眪を犯すも暫く人王ず䜜らんず。即ち歊垝是なり。昔囜王有りお民を治むるこず等しからず。今倩王ず䜜れども倧鬌王ず為る。即ち東南西の䞉倩王是なり。拘留孫の末に菩薩ず成りお発誓し珟に北王ず䜜る、毘沙門是なり」云云。是等の文を以お之を思ふに、小乗戒を持しお砎る者は六道の民ず䜜り、倧乗戒を砎する者は六道の王ず成り、持する者は仏ず成る是なり。

 第䞃に声聞道ずは、歀の界の因果をば阿含小乗十二幎の経に分明に之を明かせり。諞倧乗経に斌おも倧に察せんが為に亊之を明かせり。声聞に斌お四皮有り。䞀には優婆塞、俗男なり。五戒を持し苊・空・無垞・無我の芳を修し、自調自床の心匷くしお敢ぞお化他の意無く、芋思を断尜しお阿矅挢ず成る。歀くの劂くする時自然に髪を剃るに自ら萜぀。二には優婆倷、俗女なり。五戒を持し髪を剃るに自ら萜぀るこず男の劂し。䞉には比䞘僧なり、二癟五十戒 具足戒なり を持しお苊・空・無垞・無我の芳を修し、芋思を断じお阿矅挢ず成る。歀くの劂くするの時、髪を剃らざれども生ぜず。四には比䞘尌なり。五癟戒を持す、䜙は比䞘の劂し。䞀代諞経に列座せる舎利北・目連等の劂き声聞是なり。氞く六道に生ぜず、亊仏・菩薩ずも成らず、灰身滅智し決定しお仏に成らざるなり。小乗戒の手本たる尜圢寿の戒は、䞀床䟝身を壊れば氞く戒の功埳無し。䞊品を持すれば二乗ず成り、䞭䞋を持すれば人倩に生じお民ず為る。之を砎れば䞉悪道に堕しお眪人ず成るなり。安然和尚の広釈に云はく「䞉善の䞖戒は因生じお果を感じ業尜きお悪に堕す。譬ぞば楊葉の秋至れば金に䌌たれども、秋去れば地に萜぀るが劂し。二乗の小戒は持する時は果拙く砎する時は氞く捚぀。譬ぞば瓊噚の完くしお甚ふるに卑しく、若し砎れば氞く倱するが劂し」文。

 第八に瞁芚道ずは、二有り。䞀には郚行独芚、仏前に圚りお声聞の劂く小乗の法を習ひ、小乗の戒を持し、芋思を断じお氞䞍成仏の者ず成る。二には麟喩独芚、無仏の䞖に圚りお飛花萜葉を芋お苊・空・無垞・無我の芳を䜜し、芋思を断じお氞䞍成仏の身ず成る。戒も亊声聞の劂し。歀の声聞瞁芚を二乗ずは云ふなり。

 第九に菩薩界ずは、六道の凡倫の䞭に斌お、自身を軜んじ他人を重んじ、悪を以お己に向け善を以お他に䞎ぞんず念ふ者有り。仏歀の人の為に諞の倧乗経に斌お菩薩戒を説きたたぞり。歀の菩薩戒に斌お䞉有り。䞀には摂善法戒、所謂八䞇四千の法門を習ひ尜くさんず願す。二には饒益有情戒、䞀切衆生を床しおの埌に自らも成仏せんず欲する是なり。䞉には、摂埋儀戒、䞀切の諞戒を尜く持せんず欲する是なり。華厳経の心を挔ぶる梵網経に云はく「仏諞の仏子に告げお蚀はく、十重の波矅提朚叉有り。若し菩薩戒を受けお歀の戒を涌せざる者は菩薩に非ず、仏の皮子に非ず、我も亊是くの劂く涌す。䞀切の菩薩は已に孊し、䞀切の菩薩は圓に孊し、䞀切の菩薩は今孊す」文。菩薩ず蚀ふは二乗を陀きお䞀切の有情なり。小乗の劂きは戒に随ひお異なるなり。菩薩戒は爟らず。䞀切の有心に必ず十重犁等を授く。䞀戒を持するを䞀分の菩薩ず云ひ、具に十分を受くるを具足の菩薩ず名づく。故に瓔珞経に云はく「䞀分の戒を受くるこず有れば䞀分の菩薩ず名づけ、乃至二分・䞉分・四分・十分なるを具足の受戒ずいう」文。

 問うお云はく、二乗を陀くの文劂䜕。答ぞお云はく、梵網経に菩薩戒を受くる者を列ねお云はく「若し仏戒を受くる者は囜王・王子・癟官・宰盞・比䞘・比䞘尌・十八梵倩・六欲倩子・庶民・黄門・婬男・婬女・奎婢・八郚・
鬌神・金剛神・畜生乃至倉化人にもあれ、䜆法垫の語を解するは尜く戒を受埗すれば皆第䞀枅浄の者ず名づく」文。歀の䞭に斌お二乗無きなり。方等郚の結経たる瓔珞経にも亊二乗無し。

 問うお云はく、二乗所持の䞍殺生戒ず菩薩所持の䞍殺生戒ず差別劂䜕。答ぞお云はく、所持の戒の名は同じず雖も、持する様䞊びに心念氞く異なるなり。故に戒の功埳も亊浅深有り。

 問うお云はく、異なる様劂䜕。答ぞお云はく、二乗の䞍殺生戒は氞く六道に還らんず思はず、故に化導の心無し。亊仏菩薩ず成らんず思はず、䜆灰身滅智の思ひを成すなり。譬ぞば朚を焌き灰ず成しおの埌に䞀塵も無きが劂し。故に歀の戒をば瓊噚に譬ふ。砎れお埌甚ふるこず無きが故なり。菩薩は爟らず。饒益有情戒を発こしお歀の戒を持するが故に、機を芋お五逆十悪を造り同じく犯せども歀の戒は砎れず、還っお匥戒䜓を党くす。故に瓔珞経に云はく「犯すこず有れども倱せず、未来際を尜くす」文。故に歀の戒をば金銀の噚に誓ふ。完くしお持する時も砎する時も氞く倱せざるが故なり。

 問うお云はく、歀の戒を持する人は幟劫を経おか成仏するや。答ぞお云はく、瓔珞経に云はく「未だ䜏前に䞊らざる前○若しは䞀劫二劫䞉劫乃至十劫を経お初䜏の䜍の䞭に入るこずを埗」文。文の意は凡倫に斌お歀の戒を持するを信䜍の菩薩ず云ふ。然りず雖も䞀劫二劫乃至十劫の間は六道に沈茪し、十劫を経お䞍退の䜍に入り氞く六道の苊を受けざるを䞍退の菩薩ず云ふ。未だ仏に成らず、還っお六道に入れども苊無きなり。

 第十に仏界ずは、菩薩の䜍に斌お四匘誓願を発すを以お戒ず為す。䞉僧祇の間六床䞇行を修し、芋思・塵沙・無明の䞉惑を断尜しお仏ず成る。心地芳経に云はく「䞉僧䌁耶倧劫の䞭に具に癟千の諞の苊行を修し、功埳円満しお法界に遍く、十地究竟しお䞉身を蚌す」文。「因䜍に斌お諞の戒を持ち、仏果の䜍に至りお仏身を荘厳す」文。䞉十二盞・八十皮奜は即ち是戒の功埳の感ずる所なり。䜆し仏果の䜍に至れば戒䜓倱す。譬ぞば華の果ず成りお華の圢無きが劂し。故に倩台の梵網経疏に云はく「仏に至りお乃ち廃す」文。 

 問うお云はく、梵網経等の倧乗戒は珟身に䞃逆を造れるず䞊びに決定性の二乗ずを蚱すや。

 答ぞお云はく、梵網経に云はく「若し戒を受んず欲する時は、垫応に問ひ蚀ふべし。汝珟身に䞃逆の眪を䜜らざるや、菩薩の法垫は䞃逆の人の䞎に珟身に戒を受けしむるこずを埗ず」文。歀の文の劂くんば䞃逆の人は珟身に受戒を蚱さず。倧般若経に云はく「若し菩薩蚭ひ䌜沙劫に劙の五欲を受くるずも、菩薩戒に斌おは猶犯ず名づけず。若し䞀念二乗の心を起こさば即ち名づけお犯ず爲す」文。倧荘厳論に云はく「恒に地獄に凊すず雖も倧菩提を障ぞず、若し自利の心を起こさば是倧菩提の障りなり」文。歀等の文の劂くんば六凡に斌おは菩薩戒を授け、二乗に斌おは制止を加ふる者なり。二乗戒を嫌ふは二乗所持の五戒・八戒・十戒・十善戒・二癟五十戒等を嫌ふに非ず。圌の戒は菩薩も持すべし。䜆二乗の心念を嫌ふなり。

 倫以れば持戒は父母・垫僧・囜王・䞻君・䞀切衆生・䞉宝の恩を報ぜんが為なり。父母は逊育の恩深し。䞀切衆生は互ひに盞助くる恩重し。囜王は正法を以お䞖を治むれば自他安穏なり。歀に䟝っお善を修すれば恩重し。䞻君も亊圌の恩を蒙りお父母・劻子・眷属・所埓・牛銬等を逊ふ。蚭ひ爟らずず雖も䞀身を顧みる等の恩是重し。垫は亊邪道を閉じ正道に趣かしむる等の恩是深し。仏恩は蚀ふに及ばず。是くの劂く無量の恩分之有り。而るに二乗は歀等の報恩皆欠けたり。故に䞀念も二乗の心を起こすは十悪五逆に過ぎたり。䞀念も菩薩の心を起こすは䞀切諞仏の埌心の功埳を起こせるなり。已䞊四十䜙幎の間の倧小乗の戒なり。

 法華経の戒ず蚀ふは二有り。䞀には盞埅劙の戒、二には絶埅劙の戒なり。先づ盞埅劙の戒ずは、四十䜙幎の倧小乗の戒ず法華経の戒ず盞察しお爟前を麁戒ず云ひ法華経を劙戒ずいふ。諞経の戒をば未顕真実の戒・歎劫修行の戒・決定性の二乗戒ず嫌ふなり。法華経の戒は真実の戒・速疟頓成の戒・二乗の成仏を嫌はざる戒等を盞察しお麁劙を論ずるを盞埅劙の戒ず云ふなり。

 問うお云はく、梵網経に云はく「衆生仏戒を受くれば即ち諞仏の䜍に入る。䜍倧芚に同じ已に真に是諞仏の子なり」文。華厳経に云はく「初発心の時䟿ち正芚を成ず」文。倧品経に云はく「初発心の時即ち道堎に坐す」文。歀等の文の劂くんば四十䜙幎の倧乗戒に斌お法華経の劂く速疟頓成の戒有り。䜕ぞ䜆歎劫修行の戒なりず云ふや。答ぞお云はく、歀に斌お二矩有り。䞀矩に云はく、四十䜙幎の間に斌お歎劫修行の戒ず速疟頓成の戒ず有り。法華経に斌おは䜆䞀぀の速疟頓成の戒のみ有り。其の䞭に斌お、四十䜙幎の間の歎劫修行の戒に斌おは、法華経の戒に劣るず雖も、四十䜙幎の間の速疟頓成の戒に斌おは法華経の戒に同じ。故に䞊に出だす所の衆生、仏戒を受くれば即ち諞仏の䜍に入る等の文は、法華経の「須臟聞之、即埗究竟」の文に之同じ。䜆し無量矩経に四十䜙幎の経を挙げお歎劫修行等ず云ぞるは四十䜙幎の内の歎劫修行の戒蚈りを嫌ふなり。速疟頓成の戒をば嫌はざるなり。䞀矩に云はく、四十䜙幎の間の戒は䞀向に歎劫修行の戒、法華経の戒は速疟頓成の戒なり。䜆し䞊に出す所の四十䜙幎の諞経の速疟頓成の戒に斌おは、凡倫地より速疟頓成するに非ず。凡倫地より無量の行を成じお無量劫を経、最埌に斌お凡倫地より即身成仏す。故に最埌に埓ぞお速疟頓成ずは説くなり。委悉に之を論ぜば歎劫修行の所摂なり。故に無量矩経には総お四十䜙幎の経を挙げお、仏、無量矩経の速疟頓成に察しお宣説菩薩歎劫修行ず嫌ひたたぞり。倧荘厳菩薩歀の矩を承けお領解しお云はく「無量無蟺䞍可思議阿僧祇劫を過ぐれども、終に無䞊菩提を成ずるこずを埗ず。䜕を以おの故に、菩提の倧盎道を知らざるが故に、怜埄を行くに留難倚きが故に。乃至倧盎道を行くに留難無きが故に」文。若し四十䜙幎の間に無量矩経・法華経の劂く速疟頓成の戒之有れば、仏猥りに四十䜙幎の実矩を隠したたふの倱之有らん云云。二矩の䞭に埌の矩を䜜る者は存知の矩なり。盞埅劙の戒是なり。

 次に絶埅劙の戒ずは、法華経に斌お別の戒無し。爟前の戒即ち法華経の戒なり。其の故は、爟前の人倩の楊葉戒、小乗阿含経の二乗の瓊噚戒、華厳・方等・般若・芳経等の歎劫菩薩の金銀戒の行者、法華経に至りお互ひに和䌚しお䞀同ず成る。所以に人倩の楊葉戒の人は、二乗の瓊噚・菩薩の金銀戒を具し、菩薩の金銀戒に人倩の楊葉・二乗の瓊噚を具す。䜙は以お知んぬべし。䞉悪道の人は珟身に斌お戒無し。過去に斌お人倩に生れし時、人倩の楊葉・二乗の瓊噚・菩薩の金銀戒を持ち、退しお䞉悪道に堕す。然りず雖も其の功埳未だ倱せずしお之有り。䞉悪道の人、法華経に入る時、其の戒之を起こす。故に䞉悪道にも亊十界を具す。故に爟前の十界の人、法華経に来至すれば皆持戒なり。故に法華経に云はく「是を持戒ず名づく」文。安然和尚の広釈に云はく「法華に云はく、胜く法華を説く是を持戒ず名づく」文。爟前経の劂く垫に随ひお戒を持せず、䜆歀の経を信ずるが即ち持戒なり。爟前の経には十界互具を明かさず。故に菩薩無量劫を経お修行すれども、二乗・人倩等の䜙戒の功埳無く、䜆䞀界の功埳を成ず。故に䞀界の功埳を以お成仏を遂げず、故に䞀界の功埳も亊成ぜず。爟前の人法華経に至りぬれば䜙界の功埳を䞀界に具す、故に爟前の経即ち法華経なり、法華経即ち爟前の経なり。法華経は爟前の経を離れず、爟前の経は法華経を離れず、是を劙法ず蚀ふ。歀の芚り起こりお埌は、行者、阿含小乗経を読むも即ち䞀切の倧乗経を読誊し法華経を読む人なり。故に法華経に云はく「声聞の法を決了すれば是諞経の王なり」文。阿含経即ち法華経ず云ふ文なり。「䞀仏乗に斌お分別しお䞉ず説く」文。華厳・方等・般若・即ち法華経ず云ふ文なり。「若し俗間の経曞、治䞖の語蚀、資生の業等を説かんも皆正法に順ず」文。䞀切の倖道・老子・孔子の経は、即ち法華経ず云ふ文なり。梵網経等の暩倧乗の戒ず法華経の戒ず倚くの差別あり。䞀には圌の戒は二乗䞃逆の者を蚱さず。二には戒の功埳に仏果を具せず。䞉には圌は歎劫修業の戒なり。是くの劂き等倚くの倱有り。法華経に斌おは二乗䞃逆の者を蚱す䞊、博地の凡倫䞀生の䞭に仏䜍に入り、劙芚に至りお因果の功埳を具するなり。
 四月二十䞀日              日 蓮 花抌

RSS 宝日蚘

  • 7月がスタヌト 2025幎7月1日
    7月がスタヌトした。暑い7月の始めであるが、今月は唱題行の月でもある。
    kirimoto3

RSS 掲瀺板

アクセスカりンタヌ