さじき殿御返事 (妙一尼御返事)
文永 十年四月廿六日 五二歳
滝王丸之を遣使さる。 昔国王は自身を以て床座と為し、千才の間阿私仙に仕へ奉り妙法蓮華経の五字を習ひ持つ、今の釈尊是なり。 今の施主妙一比丘尼は貧道の身を扶けんとて小童に命じ、之を使はして法華経の行者に仕へ奉らしむ。 彼は国王此は卑賤。 彼は国に畏れなし、此は勅勘の身。 此は末代の凡女、彼は上代の聖人なり。 志既に彼に超過す。 来果何ぞ斉等ならざらんや。 何ぞ斉等ならざらんや。 弁殿は今年は鎌倉に住して衆生を教化せよ。恐々謹言。 卯月二十六日 日 蓮 花押 さじき 妙一尼御前